日本において、切っても切れない問題であるのが「自然災害」です。日本は、世界でも有数の災害大国。地震や台風、津波、洪水などあらゆる災害が発生しやすい国です。
だからこそ、企業は「企業防災」を徹底し、不測の事態に備えておく必要があります。しかし、現状としては、まだまだ企業防災が周知されていないうえに、防災関連の対策が不十分であるのが現実です。
企業防災を後回しにしてしまうと、いざ災害に巻き込まれたときに現場が混乱してしまう可能性があります。最悪の場合、業務の再開が難しくなって倒産するなど、深刻な被害をもたらすリスクがあるでしょう。
そこで、今回は企業防災について解説します。企業防災の概要や、現場が不足しがちな対策についてチェックしてみてください。
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企業防災とは
企業防災とは、文字通り「企業における防災対策」のことを意味します。
一般家庭の防災対策とは異なり、企業防災は人命を守ることのほか、「会社を守ること」も視野に入れて対策することが一般的です。
企業防災を徹底することにより、万が一災害に巻き込まれてしまっても、従業員やお客様の命を守れるだけでなく、業務がストップしてしまっても早い段階で業務を再開できるといった点が期待できます。
日本は災害大国でありながら、この企業防災が徹底できているケースが少ないもの。今この瞬間に災害が発生してもスムーズに対応できる、と言い切れる企業はわずかであるのが現状です。
だからこそ、企業の規模を問わず積極的に企業防災に取り組み、人命および会社を守れるよう準備していく必要があります。
企業防災における現場の不足点
企業防災を進めている会社であっても、細かい点を見ていくと現場の不足点が見えてきます。企業防災を実施するのであれば、あらかじめ現場が不足しやすい点を明確にしておき、しっかりと防災計画を立てる必要があります。
具体的に、企業防災における現場の不足点としては、何が挙げられるのでしょうか。
災害が発生した場合の各社員における対応の共有
企業防災における現場の不足点として、まず挙げられるのが「各社員の対応の共有」についてです。
万が一災害が発生したとき、社員それぞれは「自分がどんな行動をすべきなのか」を理解しておかなければなりません。例えば、「お客様を避難経路へと誘導する」「取引先に連絡をする」「情報収集をする」など、社員それぞれが役割を担って対処していくことで、災害による被害を最小限に抑えやすくなります。
しかし、現時点では災害が発生した場合の社員の対応について、明確になっていないことがほとんど。「誰が何をするのか」をしっかりと明確にし、社員同士で共有することが大切です。
災害によって退社が困難になった場合の対応の周知
企業防災で不足しがちな点といえるのが「退社困難になった場合の対応」についてです。
災害状況にもよりますが、基本的には災害が発生したら、なるべく早めに社員を帰宅させることが好ましいといえます。しかし、被害規模が大きく公共交通機関がストップしてしまったり、地域の状況から避難は危険である場合があったりするでしょう。
上記のように、災害によって社員の退社が困難になったら、どうすればいいのかを社内で周知することは重要です。
「会社に泊まる」「周辺の宿泊施設を手配する」など、会社によって対応は大きく異なるはず。いざ災害が発生し、帰宅が難しいと判断されてから混乱しないためにも、あらかじめ「帰宅が困難な場合はどうするか」を明確にし、周知しておきましょう。
ただし、災害状況によってはむやみに移動しないほうが良い場合もあります。「帰宅できる場合であっても帰宅しないほうが良いケース」についてもしっかりと触れ、社員の安全を確保してください。
災害で出社できない場合の顧客対応のルール化
企業防災において、現場で不足しているケースが多いのが、「出社できない場合の対応」についてです。
災害規模が大きく、本来であれば出社しなければならない日であっても、出社が難しいことがあります。しかし、仮に出社が難しいとしても、顧客が存在する以上はしっかりと対応していかなければなりません。
そんなときに必要なのが「災害で出社できない場合の顧客対応のルール化」です。。ルールとして周知することで、出社できなくても顧客への損害および自社への損害を最小限に抑えやすくなります。
災害で出社できない場合に備え、顧客対応のルール化を進めておきましょう。
災害マニュアルの整備
「災害マニュアルの整備」は、現場で不足しがちなポイントの一つです。
大災害はほぼ確実にやってくるといわれている日本において、災害マニュアルは必須といえます。災害発生時の指針をマニュアルとして設定するだけでなく、「さまざまなトラブル」を想定して整備することで、より実践的なマニュアルを作成することができます。
災害発生時はイレギュラーなトラブルの連続であるため、防災マニュアルを設定・整備することが大切です。なお、災害マニュアルを周知させる際には、文書にして全社員に配布したり、PDFなどの電子ファイルとして共有するなど、すべての社員の目に触れるように工夫する必要があります。
単純に、マニュアルを作成して掲示するだけ…といった方法では、なかなか社内で浸透しない可能性がありますので、必ず一人一人の目に触れるように心がけてください。
食料および備蓄品の周知
企業防災において、しっかりとチェックしたいのが食料や備蓄品の周知についてです。
防災を進めている企業の中には、「食料品や備蓄品を社員の人数分準備している」といったように、万が一に備えているケースもあるでしょう。しかし、せっかく食料や備蓄品を準備していても、社員がその事実を知らなければ、いざというときにスムーズに活用できなくなってしまいます。
「どこに保管してあるのか」「どれくらいの量が保管してあるのか」などは最低限周知しておくべきといえるでしょう。また、普段使い慣れていない防災アイテムがあれば、あわせて「使い方」についても説明しておくことをおすすめします。
とくに、「携帯トイレ」「火を使わずに調理できる食品」「簡易ヘルメット」などは普段目にすることも少ないものです。災害が発生してから慌てて説明書を読まなくても済むように、日ごろから定期的に使い方を発信しておきましょう。
BCPへの正しい理解
BCPに関する正しい理解も、企業防災における非常に重要なポイントです。
BCPとは、事業継続計画のことであり、災害が発生した場合に「被害を最小限に抑えること」「事業をスムーズに復旧へと導くこと」「事業を継続すること」などを重視して計画することを意味します。
BCPの策定は、災害の多い日本において重要な要素です。会社や社員を守るためには、災害が発生したらどうすべきかをBCPで明確にする必要があります。
しかし、ここで注意しなければならないのが「BCPの策定はゴールではない」ということです。企業の中には、BCPを策定したことで安心してしまっているケースがあります。しかし、災害情報は常に変化しているものですし、企業も日々成長していることでしょう。過去に策定したBCPが必ずしも現在の自社に適しているとは限りません。
そのため、定期的にBCPを見直し、改善していく必要があります。どのような状況にも対応できるよう、自社のBCPについて今一度見直しをしてみてはいかがでしょうか。
企業防災の必要性について
災害における防災の必要性は誰もが知る事実です。しかし、「企業防災」となると、本当に必要なのかを疑問に感じる方もいるでしょう。
ここからは、企業防災の必要性について詳しく解説します。
法的に義務付けられている
企業に必要な「企業防災」は、法的に義務付けられていることであるため、必ず徹底しなければなりません。
実際、過去には防災対策が不十分であったことが理由で、企業の責任を認められた事例があります。企業防災というと、漠然と「顧客のため」「社員のため」「会社のため」といったイメージがあるでしょう。しかし、明確に義務付けられていることですので、漠然としたイメージの中ではなく、計画性を持って防災対策を実施する必要があります。
ちなみに、過去に自然災害によって責任を認められた企業は、最高裁で「安全配慮義務」の観点から判決が下されました。企業の不十分な防災対策は、従業員が犠牲になるだけではなく、企業自身も大きな損害となってしまうのです。
今後の信頼にも関わることですから、企業防災は徹底しなければなりません。
地方自治体でも条例が設けられている
あまり知られていませんが、企業防災は地方自治体でも条例が設けられています。
具体的な条例内容は都道府県や政令指定都市などによって異なるものの、従業員の人数に対する一定の量の備蓄を求めていますし、食料品や非常用アイテムなどのほか、毛布やマスク、ろうそくといったアイテムの備蓄が条例で定められていることがあります。
地方自治体で設けられている条例は、主に「帰宅困難者の従業員」を守るためのものであり、備蓄を中心とした対策を義務付けていることが多いです。
地域によって必要な備蓄の量は異なりますので、必ず会社が位置する地方自治体の条例を確認し、定められた量を確保してください。
企業防災のポイント
企業防災の必要性について把握していても、具体的にどのように進めればいいのか分からない…というケースは多いです。
ここからは、企業防災のポイントについて解説します。どのような部分に着目して企業防災を進めていけばいいのか、チェックしてみてください。
安全確保を最優先に
企業防災のポイントとしてまず挙げられるのが「安全確保を最優先にすること」です。
地震や洪水、台風、火災などのシーンでは、人命が大きく関わっています。深刻な事態に陥らないためにも、安全確保を最優先にできるような企業防災を努めなければなりません。
具体的には、「避難経路の共有」「備蓄の徹底」「オフィス家具などの転倒防止」などは、安全確保として重要なポイントでしょう。
災害が発生すると現場は大混乱に陥ることが予測されます。混乱の結果、従業員や顧客が避難に遅れてしまう…といった事態も考えられますので、第一に「安全確保」を優先した企業防災を計画しましょう。
二次被害予防を徹底
企業防災において、知っておきたいのが「二次被害」の存在です。地震が発生した後に、火災が発生するといったような二次被害は決して珍しいことではありません。また、大混乱の中で従業員がケガをすることも考えられるでしょう。
二次被害はあらかじめ対策を進めておけば回避できる可能性が高くなります。また、仮に回避できなくても、被害を最小限に抑えやすくなりますので、二次被害を想定とした企業防災が重要です。
日ごろから、消火器の使い方を訓練しておいたり、混乱しないように万が一の避難方法を共有しておくなど、スムーズに対応できるような心がけをしてください。
事業継続における取り組みを明確化
災害が発生したとき、企業が重視しなければならないのが「事業継続のための取り組み」です。
企業防災を行っていない状況で、万が一企業が被災したら、事業の継続が難しくなる可能性があります。当然、事業の継続が困難になれば倒産や廃業に追い込まれることでしょう。
顧客に損害を与えてしまうだけでなく、従業員の収入も途絶えることとなり、あらゆる方面にさまざまな問題が生じます。だからこそ、事業継続のための取り組みを明確にしておくことが大切なのです。
被災時の事業継続で必要なのは、「情報収集」「顧客対応」「社内の損害状況の確認」「復旧業務」など。災害時に人命を守ることを優先するのはもちろんですが、災害が落ち着いたらすみやかな事業継続を図っていく必要があります。
また、事業継続のための対応については、社員一人一人が役割を持ち、自主的に行動を起こせるように体制を整えておきましょう。
地域貢献・共生の意識づくり
企業防災で見落としがちなのが、地域との関係構築です。
災害が発生すると、自社だけではなく周辺地域の人々とのコミュニケーションが必要不可欠となってきます。被災期間を乗り越えていくためには、地域と会社が一体となってお互いに助け合っていく必要があるのです。そのためには、日ごろから地域貢献や共生の意識づくりを徹底し、災害が発生したときにスムーズに連携できるような関係を構築しなければなりません。
具体的には、「定期的に地域住民を交えた防災関連のイベントを実施する」「会社の防災関連の情報を発信する」などが挙げられるでしょう。
また、災害時には利益を考えずに積極的に地域をサポートする動きが必要となるシーンもあります。「自社の駐車スペースを避難所として提供する」「地域の被災状況をこまめに発信する」「商品を被災者に提供する」など、業種によっては積極的に助ける姿勢が必要となるかもしれません。
いずれにせよ、日ごろの地域貢献はいざというシーンで多くの人々を助けることにつながります。社内・社外という枠内のみにとどまらず、積極的に地域貢献を意識してみてください。
防災教育・防災訓練
企業防災において、重要なのが「防災のための知識」「防災の経験」です。
漠然と「防災では何をやるべきか」をイメージするよりも、具体的な防災知識を把握したほうが現場での立ち回りはスムーズです。
また、知識を得るだけではなく、実際に防災訓練を通して災害時の行動をシミュレーションしておけば、いざというときに混乱せずに冷静に対処しやすくなるでしょう。
そのためにも、企業は積極的に防災教育や防災訓練を実施することがおすすめです。
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子供から大人まで楽しく参加できるのが魅力。遊び感覚で正しい防災知識を身に付けることができます。
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まとめ
企業防災は、会社の存続に大きく関わることです。そのため、日ごろから防災に努め、会社はもちろんのこと従業員や顧客をしっかりと守らなければなりません。しかし、現状は「企業防災の不足点」が多いもの。まだまだ改善が必要な企業は少なくありません。
この記事では、そんな「企業防災の不足しがちな点」について詳しく解説しました。自社の防災に不安がある方は、本記事の内容を参考にしながら、今一度防災計画を見直してみてはいかがでしょうか。
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1993年生まれ。栃木県在住。一児のシングルマザーライター。Web媒体・紙媒体にて、ジャンルを問わず多くのメディアで執筆。BtoB向け記事のほか、ママ目線でのコラム執筆も手掛ける。専門家や起業家などへの年間インタビュー数200人を目標に、パワフルに活動中。