防災コラムでは、毎回これからの防災を担うプレイヤーに焦点を当てて取材しています。今回は、法人向けリスクマネジメントサービス「Resilire」やボランティアのマッチングプラットフォーム「スマレプ」を運営している株式会社Tech Designの代表・津田裕大様にインタビューを実施。
I Tを活用したアプローチが特徴的な事業の概要や、ご自身が考える防災の課題について、語っていただきました。
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現在行っている活動の特徴やビジョン
−まずは、現在行っている活動の特徴についてお聞かせください。
(津田様)メインの活動としては、法人向けのSaaS型リスクマネジメントプラットフォーム「Resilire」を提供しています。
災害がどんどん世界的に増えている中で、企業の損害を減らしたり経済活動を持続的におこなったりするためのITツールがあまりないなぁと思ったことが、この事業を始めるきっかけでした。
災害が起きても、企業が事業を止めずにしっかり経済活動を維持するために、ITを活用したイノベーションを起こすべきだと考え始めました。
★サービスサイトはこちらからご覧いただけます。
−掲げているビジョンを教えてください。
(津田様)ビジョンは、災害が起きても経済が止まらない社会を創造することです。
災害が一回起きただけで、今まで長年積み上げてきたものを失ってしまうのってすごく辛く、あってはならないことだと思うんです。
企業が今まで培ってきたことをしっかり守ることが私たちの事業で重要なことであり、そこに貢献していきたいなと思っています。
−ITを活用した企業向けのソリューション提案というと、具体的にどのようなものでしょうか?
(津田様)SaaS型のリスクマネジメントプラットフォームを提供しています。
主に、BCPをクラウドで管理し、災害時にBCPが有効に働くことを促すものです。
もう一つは、サプライチェーン(委託先、調達先)のリスク回避ですね。サプライチェーンが被災した際の対応を瞬時にできるようなサービスを展開しています。
−ちなみに、事業を始めてから今どのくらい経ちましたか?何社ぐらいにご導入いただいていますか?
(津田様)実は今の事業はまだ開発したばかりで、6月末にクローズドβという形で始めました。
現在は、大企業さんや中堅企業さんにトライアルで5社ほど導入していただいています。
現在の活動を行われるきっかけやヒストリー
−現在の事業開発を始めた背景には何があったのでしょうか?
(津田様)西日本豪雨を経験したことが、防災に課題意識を持ったきっかけでした。
災害が起こるたびに多大な損害が生まれ、多くの人が悲しむ。
そこに新しい技術を取り入れて何かをやるべきじゃないか、と思ったのがきっかけのひとつでした。
また、SAIGAIJOURNALというメディアを運営しているのですが、その取材で幾つかの被災地を訪れました。例えば北海道とか熊本も行きましたし、仙台や和歌山、四国にも足を運びました。
そこで自治体の危機管理部の方達にインタビューさせていただいた中で、BCPの存在を知りました。
そして、BCPは実際、災害が起きたときになかなか機能していないということも知りました。
その事実を受け、「ITを使えばもっと機能するようにできるのではないか」と思いこの事業を始めました。
日本の防災の課題
−今感じている日本の防災の課題はございますか?また、今やおこなっている事業で解決できる防災の課題はどんなものですか?
(津田様)企業は、売り上げを上げることにリソースを割きたいと思っています。
災害はいつか起きるものということを皆わかってはいますが、防災って目先の売り上げを上げるものではないので、企業は、「いつかあるもの」に備えることに対し、なかなかお金を出しづらいんですよね。
それって当たり前だけど、それが故に、今までやってきたものが一瞬でなくなってしまう可能性があります。
企業が防災をどうしても後回しにしてしまうという課題を解決することが、私たちが取り組むべき課題なのではないかと思います。
また、もう一つの課題としては、防災の大切さに気づいたとはいえ、今までのやり方で、本当の意味で災害の損害を抑えられるか、ということです。本当に損害を抑えられるソリューションが生まれてこないといけないな、と思っています。
−ありがとうございます。ちなみに、海外と比べた日本の防災については、どのように感じますか?
(津田様)世界的に、日本の防災リテラシーはトップクラスです。日本は災害が多い分、災害から身を守る術も多くあります。なので対策は世界と比べると進んでいると言えます。
そのため、日本の今までの防災のノウハウや技術は、世界で活用できるのではないかと思っています。
現在、法人向けのサービスを展開し始めたところですが、日本で災害が起きたとき、本当に企業の役に立つことができたら、海外でもこの事業を展開していきたいなと思っています。
これから行っていきたいこと
−これからやりたいことやチャレンジしたいことはありますか?
(津田様)直近で挑戦したいことは、現在提供しているプラットフォームを本当の意味で災害が起きたときに使えるサービスにすることです。
本当の意味で使えるというのは、全ての意思決定がデータ主導で行えるようになる事だと考えています。AIなどの技術を活用する事で、被災状況の把握や災害対応の意思決定など、データを活用し正確にできるよう促していけるものにしていきたいと考えております。
−ちなみに、まだテスト期間ではありますが、実際これまでに活用された事例はございますか?
(津田様)現在試験的にご導入いただいている企業様での事例はありませんが、法人向けではなく、一般向けに展開している災害ボランティアのマッチングサービス「スマレプ」に関しては、台風19号で被害が起きたときには多くの方に使っていただきました。ボランティアの方が2000名ぐらい集まりました。
また、2020年7月に豪雨の被害を受けた熊本の人吉でのボランティアでも多くの方にご利用いただきました。
あそび防災プロジェクトに期待すること
−あそび防災プロジェクトに対して期待することや、あそび防災プロジェクトを知った時に感じたことをお伺いできますか?
(津田様)まず、「遊ぶ」っていう視点がすごくいいなって思ってて。
防災ってカタ苦しくてセンシティブなので触れてはいけないと思われているところがありますよね。
そもそも触れづらいし、それこそ子供が関わることってあんまりない。
そんな中、「遊び」といったラフな形で防災に触れられるのってすごくいいなって思います。
今まで、メディアが「災害がどれぐらい恐ろしいか」みたいな、災害が起きたらこうなります、って煽って危機感を持たせ、防災をしてもらうという流れがありましたが、あれは心理的負担を与えてしまいますよね。
防災を楽しくやろう、ラフに触れて防災の重要性について学び、知識を増やしていこう、っていうのは、とても有意義なことだと思います。
防災に興味のない人に関心を持ってもらえるようなことって、私たちにはなかなかできないことなので、そこをぜひあそび防災プロジェクトにお願いしたいと思っています。
津田様にとって防災とは?
−では最後に、津田様にとって、「防災」とは何でしょうか?
(津田様)どう捉えているかっていうのを簡単にお伝えすると、なくてはならないもの、当たり前に存在していいものだと思います。
触れる機会、考える機会が少ないけれど、もっとみんなが重要性に気づくべき、誰もがもっと触れるべきものだと考えています。
−なるほど。「考えなきゃいけない」と思うと少しハードルが高い気がしますが、「当たり前のもの」と思えたら、皆が自然に取り組むようになりますよね。
−本日はお時間をいただき、誠にありがとうございました!I T を活用した新たな防災の可能性についてお伺いすることができ、とても有意義な時間となりました。
またどこかでご一緒できるのを楽しみにしています!
(津田様)ありがとうございました!今後もお互いの得意分野で頑張っていきましょう!
まとめ
今回のインタビューを通し、企業のBCPがなかなかうまく機能していないことや、防災に真剣に取り組めている企業がまだまだ少ないということがわかりました。
そして、ITの力を使ってその課題を解決しようという新たなサービスが生まれていく中で、企業の防災のあり方も今後変わっていくのではないか、と感じました。
津田様、貴重なお話ありがとうございました!
★株式会社Tech Designのホームページはこちら
https://tech-design.co.jp/
株式会社IKUSAのオウンドメディア担当。「あそび防災プロジェクト」をはじめとするメディアの編集長を務めています。記事の編集、校正、アナリティクス分析、駆け出し動画編集、WEBデザイン、メルマガ企画など遊びの会社の1人マーケターとして奔走中!