災害大国である日本において、「防災」は欠かせない対策です。しかし、防災の他にも、「減災」が近年は注目されています。
防災も減災も同じような意味として扱われることがありますが、実際は明確な違いがあり、減災は現代の日本で防災よりも重視すべきという考えもあります。
そこで、今回は減災の概要や、防災との違いについて解説します。現代の日本に重要な理由について迫っていきましょう。お問い合わせする
- 目次 -
減災とは?
まずは、減災とはどのようなものなのかを解説します。
概要を理解して、減災の基本を知っておきましょう。
災害による被害を最小限に抑えること
減災とは、災害による被害を最小限に抑えることをいいます。
地震や台風など、自然災害が発生しやすい日本において、災害を未然に防ぐことは難しいのが現状です。そのため、災害が起きてしまったときに、いかに被害を抑えるかというのが、非常に重要とされています。
企業であれば、人の命を守るための取り組みはもちろんのこと、BCP(事業継続計画)を立て、災害時の損害を抑えることも、減災の取り組みの一つといえるでしょう。
災害が発生することを前提に対策する
減災は、災害が発生することを前提として対策することでもあります。
もともと、日本は古くから災害に悩まされてきた国でありますが、現代は地球温暖化の影響などにより、異常気象や過去に記録したことがないほどの被害をもたらす気象情報が相次いでいる状況です。
これまでの日本の災害記録からも分かるとおり、自然災害を食い止めることは不可能として、国土交通省が「減災」について提唱をしました。これが、一般的に認識されている「減災」の始まりです。
実際、「南海トラフ巨大地震」「首都直下型地震」「噴火」など、懸念されている自然災害は多く、発生する確率も極めて高いといわれています。
こうした状況をふまえると、「災害を防ぐ」という取り組みは難しく、「災害が起きた後の被害をいかに抑えるか」が大切であると分かります。
減災と防災の違い
減災と似たワードとして「防災」が挙げられますが、それぞれ具体的な違いについて正しく把握している方は少ないものです。
ここからは、減災と防災の違いについて解説します。
災害の発生が前提であるか否か
減災と防災の大きな違いといえるのが「災害の発生が前提であるか否か」です。
減災は、前項でも触れたとおり「災害が発生すること」を前提としているのに対し、防災は災害の発生が前提ではありません。
イメージとすると、減災は「必ず災害が発生するから備える」というものであり、防災は「万が一災害が発生したときに備える」というものです。つまり、災害対策の必要性の高さでいうと「減災」の方が高いといえます。
災害を食い止めることが防災
防災は災害を食い止めることを目的としているのが特徴です。
例えば、津波や河川の氾濫を防ぐためにも防波堤を作ったり、万が一災害が発生しても被害を0にするために準備するということです。
しかし、さまざまな災害リスクを抱えている日本において、完全に災害を防いだり、被害を一切受けないように準備したりすることはほぼ不可能であるのが現状です。
一方減災は、災害が発生することと、ある程度の被害があることを前提としているため、大きな災害のリスクを抱えている日本において適した取り組みといえます。
減災・防災の課題について
減災も防災も、「災害対策」という意味では重要です。しかし、現在の日本ではこの減災・防災でさまざまな課題が挙がっている状況でもあります。
ここからは、減災・防災の課題について解説しますので、自社や家庭の状況と照らし合わせながら、問題点を探してみてください。
高齢家族の避難
減災・防災の課題として、まず挙げられるのが「高齢家族の避難」です。
現在、日本は高齢社会の真っただ中であり、高齢者とともに生活している家庭は多いです。ここで問題となるのが、万が一災害が発生した場合、高齢家族とともにスムーズに避難できるか、という点です。一緒に暮らす高齢家族によっては、体が不自由である、ほぼ寝たきりの状態であるなど、避難が難しいケースも見られます。
高齢家族と暮らす世帯がどのようにして避難するかは、現代の日本の大きな課題です。
大きな災害が起きることを想定し、家族で対処法を話し合っておくことが重要です。
ペットとの避難
あまり知られていませんが、減災・防災の課題のひとつに「ペットとの避難」があります。
災害が発生した場合、自宅での待機が難しいときには避難所の利用が必須です。しかし、避難所の多くが「ペット同伴禁止」となっています。
これは、他の利用者に配慮したものであることが多く、ペットと一緒に暮らす家庭においては大きな問題であるのが現状です。
最近は、ペット同伴も許可されている避難所もありますが、全体で見るとかなり少数派といえます。また、仮にペット同伴が許されている避難所であっても、他の利用者とのトラブルを懸念して、利用を控えるといったケースも少なくありません。
ペットと暮らす家庭では、近くの避難所がペット許可しているか事前に確認しておくことが大切です。
避難しないという選択
減災や防災の課題のひとつに、「避難しない」という選択肢があることが、周知されていないという点があります。
大きな災害があると、「避難所へ行く」という選択肢が挙がりがちですが、必ずしも避難所に行くことが減災・防災につながるとは限りません。
例えば、大雨によって河川の氾濫や洪水が懸念される場合、むやみに避難所へ避難することはかえって危険な場合があります。
大雨の場合はなるべく自宅にとどまり、2階への避難を選択すべき場合もあるのです。
特に、新型コロナウイルスが流行している状況である場合、避難所への避難は、クラスター発生などのリスクがあり、それぞれの状況をシミュレーションして対策を行なっていく必要があります。
地域とのつながり
現代の日本ならではの課題ともいえるのが「地域とのつながりの希薄さ」です。
かつては、災害が発生すれば近隣住民などと協力しながら、被災生活を乗り越えてきたといった歴史があります。しかし、現代の日本は基本的に地域とのコミュニケーションが少ない傾向であるのが現状です。
実際、隣近所に住む入居者の顔や名前を知らない、といったケースは多く、災害が発生した場合の地域住民での協力が見込めないことも考えられるのです。
中でも「都市部」は、そうした地域のつながりが特に希薄といえます。
いざというときに助け合えるよう、日頃から地域のイベントに参加し、交流を持つようにしましょう。
日頃からの備え
減災・防災の課題として、最も大きなものであるのが「日頃からの備えが不足している」という点です。
災害による被害を最小限に抑えるためには、日頃から災害が発生したときのことを想定して、物資などを揃えておく必要があります。
また、地震に備えて家具を固定する、落下しそうなものを片づけておくなどの準備が重要です。しかし、実際にこうした備えが完璧にできている方は少なく、改善すべき点が目立ちます。
災害はいつ起きるかわかりません。自分の対策が万全か、定期的に見直す癖をつけましょう。
まとめ
今回は、減災について解説しました。
災害に関する情報では「防災」が基本でしたが、近年は「減災」に切り替えて考えられてきている状況です。
大きな災害がいつ発生してもおかしくない今、「減災」は必要不可欠なことであるといえるでしょう。
現在、災害対策に不安がある方や、減災について理解を深めたい方は、本記事を参考にしながら、自身の状況と照らし合わせてみてください。
いずれ起こるといわれている、大災害を切り抜けるためにも、しっかりと災害対策を実践しておきましょう。

1993年生まれ。栃木県在住。一児のシングルマザーライター。Web媒体・紙媒体にて、ジャンルを問わず多くのメディアで執筆。BtoB向け記事の他、ママ目線でのコラム執筆も手掛ける。専門家や起業家などへの年間インタビュー数200人を目標に、パワフルに活動中。