実施している企業が増えている「防災対策」。日本で会社を展開する以上、必要不可欠な取り組みです。
しかし、ここで注意しなければならないのが、防災の「見直し」です。企業防災を取り入れることは必要なことですが、それと同じくらい、定期的な防災対策の見直しは重要です。
とはいえ、まだまだ企業防災の見直しを定期的に実施している会社は少ないのが現状。いざというときのためにも、すぐに企業防災の見直しを行わなければなりません。
そこで、今回は企業防災の見直しポイントについて解説します。見直しをするにあたり、何をチェックしたらいいのか、しっかりと確認しておきましょう。お問い合わせする
- 目次 -
なぜ企業防災の見直しが必要なのか
まずは、なぜ企業防災の見直しが必要なのかを解説します。
「防災対策を実施したまま見直しをしていない……」という担当者は、見直しの必要性を正しく理解しましょう。
防災グッズの使用期限切れを防ぐ
企業防災の見直しが必要な理由として、まず挙げられるのが「防災グッズの使用期限切れを防ぐため」です。
防災対策に向けて、防災グッズをはじめとした備蓄を徹底している企業は多いもの。しっかりと備蓄ができていると、防災対策が十分なような気持ちになります。
しかし、防災グッズには使用期限があるものが多いため、注意しなければなりません。例えば、電池やウェットティッシュ、マスクなどは意外にも使用期限が設けられていたり、購入から期間が経つと使えなくなってしまったりするものがあります。
いざというときに使えない!といった事態を防ぐためにも、定期的に見直しをしなければなりません。
非常食の賞味期限切れを防ぐ
企業防災に見直しが必要な理由は、「非常食の賞味期限切れ」が関係しています。
水や保存食などのように、非常食を備えている企業は多いでしょう。しかし、非常食には賞味期限が存在します。
災害用の非常食であれば、購入から3~5年の賞味期限が設けられているなど、比較的長持ちする傾向にあります。そのため、ついつい見直しを怠ってしまい、気が付くと非常食の賞味期限が切れていることがあるのです。
非常食を安全に食べるためには、賞味期限内のものであることが大前提です。「少しくらいは大丈夫」と判断できる場合もありますが、人それぞれ体質やアレルギーなどが異なることを考えると、安全を重視しなければなりません。
また、「あと数か月、賞味期限まで期間があるから大丈夫」と思っても、期限が1年を切っているとあっという間に賞味期限が迫ってしまいます。
企業の規模が大きいと非常食の量も多くなるため、見直しは大変ですが、万が一に備えて定期的に非常食の賞味期限をチェックしなければなりません。
改めて防災意識を高めることができる
企業防災の見直しの意外なメリットであるのが「防災意識の向上」です。
防災対策を実施している最中や、実施直後などは、防災意識が高い状態といえます。しかし、それからとくに災害が発生せず、平穏に過ごせていると、次第に防災意識が薄れていってしまうのです。
昔から「災害は忘れた頃にやってくる」といわれています。常に災害に備え、警戒を怠らないためにも、定期的に企業防災の見直しを行って、改めて防災意識を高めなければなりません。
企業防災の見直しは、万が一の災害に備えるだけではなく、ここの意識改善にもつながることを頭に入れておきましょう。
社内・環境などの変化に合わせ防災にする
企業防災を実施した後に、社内外の環境などが変化することは多いです。前回実施した企業防災の内容では、不十分となってしまうこともあるでしょう。例えば、従業員の人数が変化したり、会社の規模が変わったりした場合は、その都度企業防災の内容を見直さなければなりません。
また、社外で関わるコミュニティがある場合や、地域との連携を図っている場合には、社内だけではなく社外にも目を向けた企業防災が必要となることもあります。
いずれにせよ、企業は常に変化しているものですから、変化に合わせた防災にするためにも、定期的に見直しをしていきましょう。
企業防災における見直しポイント
企業防災を見直すにあたり、「何を見直せばいいのか分からない……」と悩む担当者は少なくありません。
特に、防災対策が完璧であれば見直す部分はないように感じるでしょう。しかし、細かくポイントを見ていくと、意外な見落としがあることは多いです。
ここからは、企業防災における見直しポイントについて解説します。
消費期限・使用期限が過ぎていないか
企業防災を見直す際には、まずは備蓄品の「消費期限」「使用期限」をチェックしてみてください。
備蓄品は従業員や顧客の命を守るためにも重要な対策です。しかし、期限が切れていては、いざとなったときに活用することができず、物資不足に陥るリスクがあります。
企業防災の見直しを検討しているのであれば、まずは備蓄品の見直しから実施していきましょう。
なお、備蓄品を見直すにあたり、チェックするのは「期限切れの備蓄品」だけではありません。「期限が近い備蓄品」もしっかりとチェックし、必要に応じて買い足し・買い替えをする必要があります。
物資不足を防ぐためにも、必ず備蓄品の消費期限・使用期限を一つ一つ調べていきましょう。
従業員や顧客人数分の備蓄品があるか
備蓄は企業防災のみならず、一般家庭でも重要視されているポイントです。しかし、企業だからこそ見直すべきポイントがあります。それが「人数分の備蓄が整っているか」という点です。
備蓄は単純に「ある程度物資や食料を確保していればいい」というものではありません。企業の場合は、従業員の人数分はもちろんのこと、来社・来店している顧客分の備蓄も実施しなければならないのです。
そのうえ、被災して一定期間社内で過ごすことを考えると、人数分×数日~1週間の量を備蓄しておく必要があります。
「これくらいで足りるだろう」と、大まかな量を備蓄する企業もありますが、これでは災害が発生してから「備蓄の量が足りなかった」といった事態に陥ることが考えられます。
災害が発生した直後は、物資不足が懸念されますので、支援を期待することはできません。一般的に災害発生から数日で自衛隊などによる物資の支援がスタートするといわれています。そのため、1週間を目安に備蓄品を確保することが大切です。
災害時の顧客への連絡手段が明確になっているか
災害が発生したら、顧客にどのように連絡するかを見直してみましょう。
顧客の連絡手段を明確にする必要があります。
「電気がストップしてしまうこと」「電話回線が混雑して連絡が難しくなること」などを視野に入れて、適切な連絡手段を探してみましょう。
定期的な避難訓練の内容がマンネリ化していないか
定期的な避難訓練の内容がマンネリ化していないか、という点は企業防災で見直すべき部分です。
避難訓練は「安全に避難すること」を目的として実施するため、訓練内容がワンパターンになりがちといった難点があります。
しかし、毎回同じシチュエーションで避難訓練を実施しても、従業員も慣れてきてしまいますし、緊張感を持って訓練ができなくなりやすいです。
そのため、定期的に実施する避難訓練の内容は、なるべく毎回異なる内容で行うことが望ましいといえます。例えば、単純に「避難すること」だけを重視するのではなく「地震を想定する」「火災を想定する」「怪我人が出たことを想定する」「顧客が来社しているシーンを想定する」など、シーンを変更するだけでも避難訓練の内容にバリエーションが生まれます。
マンネリ化した避難訓練を変えたい、とお考えの方には、少し変わった防災イベントの実施もおすすめです。
例えば、株式会社IKUSAの運営する「おうち防災運動会」は、パソコンやスマートフォンなどのデバイスを用いて、自宅から参加できる防災イベントです。
参加者は、家にある非常食を探す「おうち探検!非常食捜索トライアル」や、動画を見て防災上の間違いを指摘する「防災間違い探しオンライン」などの競技を通して、家庭における防災の見直しを行えます。
災害は、職場で起こるとは限りません。自宅でいる時に災害が起きることも想定し、社員や社員の家族を守るために、このような防災イベントを実施してみても良いでしょう。おうち防災運動会の資料ダウンロードはこちら
「避難訓練の内容がいつも同じ」ということが気になっている方は、上記のシチュエーションを参考にしながら、今までとは異なる訓練を実施してみてください。
新しい防災情報をもとに準備ができているか
企業防災の多くは、メディアや専門機関で発信されている情報や、自社で作成したマニュアルなどをもとに準備していることがほとんどでしょう。しかし、期間が経過すると、かつて発信されていた情報はすでに古いものとなっていきます。実際、防災に関する情報は日々新しい内容が発信されている状況です。
今この瞬間に災害が発生したとしたら、古い防災情報に沿って対策した防災で対処しきれるかは大きな不安となるでしょう。
現時点の企業防災の内容をチェックし、新しい防災情報と照らし合わせながら、必要に応じて対策内容変更するなどの対応が必要です。
災害時の従業員の行動を周知できているか
企業防災において、絶対に見直しておきたいポイントが「災害時における従業員の行動の周知」です。
大きな災害が発生すると、現場は混乱してしまう可能性が高いもの。とにかく避難する方、情報収集する方、顧客を避難経路へと誘導する方などで溢れ、事態を深刻化させてしまうリスクもあります。
そのため、災害時の従業員の行動をあらかじめ明確にしておき、社内で周知することが大切です。「災害が発生したら誰が何をするか」を明確にすることは、現場の混乱を防ぐだけでなく、安全に対応を進めていくことにつながります。
社員一人一人が「自分が何をすべきか」を理解しているだけでも、パニックを防ぎやすくなり、スムーズかつ適切な行動・判断をできるようになるでしょう。
なお、災害時の従業員の行動については、書面やメールなどで周知するだけではなく、実際に避難訓練などで取り入れることがおすすめです。実際の現場を想定して、立ちまわりをイメージできるよう積極的に訓練で取り入れてください。
従業員全員が非常用グッズの使い方を認識しているか
意外に盲点となりやすいのが「非常用グッズの使い方を認識しているか否か」という点です。
万が一の災害に備えて、非常用トイレや消火器を取り入れている会社がほとんどでしょう。しかし、それぞれ正しい使い方を従業員が理解していなければ全く無意味な存在となってしまいます。
特に、消火器の使い方は必ず理解しておかなければなりません。火災が発生して混乱している中、使用方法や説明書きなどを読んでいる暇はないでしょう。火災を発見次第、速やかに消火活動を実行するためにも、非常用グッズの使い方を理解しなければなりません。
企業防災の一環として、消火訓練を取り入れる、定期的に発信する防災情報の中に「消火器の使い方」を盛り込むなどして、全社員が設備を使えるように対策することが大切です。
マスクが人数分足りているか
企業の防災対策として、「備蓄」を行う際には、マスクの確保も忘れてはいけません。
マスクは現在流行している新型コロナウイルスの感染予防に役立つだけではなく、社内での風邪や病気の蔓延を防ぐことにもつながります。
また、被災後の片づけ作業など、ホコリの舞いやすい環境ではマスクがあると快適に作業を進めやすくなるのでおすすめです。
マスクを備蓄する際には、社員や顧客の人数分が足りているかをチェックしてください。多めに確保したつもりであっても、人数分足りていない可能性があるからです。また、可能であれば人数分×1週間分のマスクを確保しましょう。
災害直後は物資が不足しやすい状況です。マスクが簡単に入手できない可能性も考えられますので、最低でも1週間分のマスクを確保しておきましょう。
ソフト面の対策が十分であるか
企業防災を見直す際には、ソフト面の対策が十分であるかをチェックしてください。
ソフト面の対策とは、いわゆる「システム」「データ」に関わる部分です。災害が発生すると、落下によってPCなどの機器が故障してしまうリスクがあります。あらかじめシステムやデータの損失対策を徹底しておかないと、大切な情報を失ってしまうかもしれません。
システムに関しては、「管理サービス」「管理会社」など、外部のサポートを受けることがおすすめです。データについては、クラウドサービスを利用しする、定期的にバックアップをとっておくなどして、しっかりとソフト面の対策を徹底しておきましょう。
企業防災における最適な見直し頻度
防災対策の見直しは、企業にとって重要です。会社を守るためにも、これまで見直しを行ったことがない企業は、これを機に定期的な見直しを計画しなければなりません。
とはいえ、企業防災の見直しをしたことがない場合は、どれくらいの頻度で見直せばいいのか分からないのが現状でしょう。
そこで、ここからは企業防災における最適な見直し頻度を解説します。企業の規模や会社の特性などと照らし合わせながら、適切な頻度をチェックしていきましょう。
半年に1回を目安に
企業防災の見直しは、なるべく半年に1回を目安に行うことが望ましいとされています。
半年に1回の頻度で見直しを行えば、防災グッズの使用期限切れを防ぎやすくなるだけでなく、企業の状況や防災状況などの変化に対応しやすくなります。
また、季節に合わせた防災対策も徹底しやすくなりますので、「十分な防災対策を実施したい」と考えているのであれば、半年に1回を目安に見直しをしましょう。
とはいえ、企業の規模が大きかったり、少数の担当者が本業と同時進行で防災対策を勧めていたりすると、半年に1回の見直しは負担になりやすいもの。その場合は、次項の頻度を参考にしてください。
最低でも1年に1回は見直しを
企業防災の見直しについて、「半年に1回」の実施が難しい場合は、最低でも1年に1回の見直しを行いましょう。
1年に1回であれば、地域の防災情報に大きな変化が生じるケースは少ないですし、会社の業績や規模の拡大などが急変することもありません。つまり、かろうじてあらゆる災害に耐えられる目安といえます。
ただし、1年に1回の頻度で企業防災を見直すのであれば、余裕を持ったチェックが必要です。例えば、備蓄品の使用期限をチェックする際には、次回の見直しの時期を考慮して、早めに回収・買い替えなどを行いましょう。「期限まであと5か月あるから」と思っても、万が一1年後に災害が発生したら、使えない可能性があります。
企業防災の見直しは1年に1回であれば許容範囲といえますが、その代わり余裕を持った見直しを心がけてください。
まとめ
今回は、企業防災の見直しの必要性や、見直しポイントなどについて解説しました。
企業防災は「実施して終わり」ではありません。定期的に防災対策の内容を見直し、必要に応じて改善したり、追加したりする必要があります。企業防災担当の方は、適切な防災対策のためにも定期的な見直しを徹底していきましょう。 資料をダウンロードするお問い合わせする

1993年生まれ。栃木県在住。一児のシングルマザーライター。Web媒体・紙媒体にて、ジャンルを問わず多くのメディアで執筆。BtoB向け記事の他、ママ目線でのコラム執筆も手掛ける。専門家や起業家などへの年間インタビュー数200人を目標に、パワフルに活動中。