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事業継続力強化計画とは?BCPとの違いやメリット、認定制度について解説

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事業継続力強化計画とは?BCPとの違いやメリット、認定制度について解説

災害などのトラブルが起きた時、企業が事業を早期復旧・継続するためには、BCP(事業継続計画)を定めておくことが必要です。しかし、BCP策定には手間がかかり、時間も一般的に6カ月から1年かかるといわれています。特に中小企業の場合、日常業務をこなすのに精一杯でBCP策定まで手が回らないかもしれません。そのような時に考えてみたいのが、特定の書式に将来行う災害対策などを記入することで災害対策計画を策定できる「事業継続力強化計画」です。

中小企業は日本経済を支える大きな役割を担っているからこそ、災害などが起きた時に事業を早期復旧・継続できるよう、事業継続力強化計画などを活用して防災・減災対策に取り組むことが大切です。本記事では、事業継続力強化計画の概要や企業にとっての必要性、メリットをお伝えするとともに、認定制度や申請手順などについて解説します

 

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事業継続力強化計画とは

中小企業庁のホームページによると、中小企業等経営強化法における事業継続力強化計画とは、「中小企業が自社の災害リスク等を認識し、防災・減災対策の第一歩として取り組むために、必要な項目を盛り込んだもので、将来的に行う災害対策などを記載するもの」とされています

参照:事業継続力強化計画認定制度の概要|中小企業庁

災害対策への取り組みとして、BCPの策定があります。まずは、事業継続力強化計画の必要性とBCPの違いについてお伝えします。

事業継続力強化計画とBCPの違い

BCPとは、災害などのトラブルが発生した時、事業を早期復旧・継続するための計画のことです事業継続力強化計画もBCPも、自然災害などが発生した時に備え、企業の事業継続力を向上させる目的は共通しています。

大きな違いは、BCPは企業がそれぞれの組織に応じた方法で柔軟に策定することができるのに対し、事業継続力強化計画は国が定めたフォーマットに合わせて作成・策定する点でしょう。事業継続力強化計画は、中小企業等経営強化法という法律で定められた制度のため、作成方法や記載事項が決まっています。そのため、人員に余裕がない中小企業でも、比較的取り組みやすいといえるでしょう。

大企業でBCPを作成する場合には、さまざまな事業を展開していることから、災害時に優先的に復旧・継続させる中核事業を選び出す作業が必要です。一方、中小企業では単一事業を行っているケースも少なくなく、復旧・継続させる事業を抽出する作業が必要ないこともあります。そのため、事業継続力強化計画で使用するフォーマットは、シンプルなものになっているのも大きな違いでしょう。

事業継続力強化計画の必要性

中小企業が地震や台風などの自然災害、感染症のまん延(パンデミック)などの被害を受けると、工場や設備が使えなくなったり、従業員が出勤できなくなったりすることに加え、売上の減少による損害を受けます事業継続力強化計画を策定することは、災害にあった際、早期に事業復旧や売上回復が目指せるため、企業や従業員を守ることにつながります

事業継続力強化計画の策定では、自社の経営資源である「人」「もの」「金」「情報」に関する災害対策を検討するため、事業継続に必要な重要資源が明確化されます。自社が抱える課題や強みも見えてくるでしょう。社内のレイアウトや動線を見直すなど、業務の効率化につながる発見も期待されるため、事業継続力強化計画の策定は、事業を見直すうえでも必要といえます。

また、自然災害によって事業停止期間が長引くと、サプライチェーンへの影響も深刻化することでしょう。災害への対応力を高める取り組みは、サプライチェーンからの評価を高め、信頼を得ることにつながります。事業の安定や拡大を目指すだけでなく、社会的な責任を果たすためにも、事業継続力強化計画を策定する必要性は高いでしょう。

事業継続力強化計画の認定制度

事業継続力強化計画認定制度では、防災・減災対策のための計画を策定・申請して要件を満たすことで、経済産業大臣からの認定を受けることができます。ここでは、中小企業庁のホームページにある「事業継続力強化計画認定制度の概要」をもとに、認定制度を活用する際の流れについて説明します。

参考:事業継続力強化計画認定制度の概要 (meti.go.jp)

審査を受けるための準備

認定制度の審査を受けるために、まずは自社が認定の対象となる中小企業となるかを確かめる必要があります。対象となる中小企業については、製造業、卸売業、小売業などの職種ごとに、資本金の額や従業員の数が決められています。

参照:事業継続力強化計画認定制度の概要|中小企業庁

また、中小企業者に該当する法人形態についても、以下のように定められています。

  • 個人事業主
  • 会社法上の会社
  • 企業組合や協業組合、生活衛生同業組合など

個人事業主は開業届の提出、法人は法人設立登記がされているなど、対象となる中小企業にはさまざまな要件があるため、事前に確認する必要があります。

事業継続力強化計画の策定

次に、事業継続力強化計画の策定を行います。事業継続力強化計画には「単独型」と「連携型」があり、自社のみの計画の場合は「単独型」、複数事業者間で連携して計画する場合は「連携型」を選択します。どちらにするのかを選び、中小企業庁のホームページにある「基本方針」「作成指針」「策定の手引き」を参照しながら、計画を作ります。

事業継続力強化計画の申請

単独型の場合は、事業継続力強化計画電子申請システムから申請し、連携型は代表する中小企業者等の所在地を管轄する経済産業局に書類を提出します。既に計画があり、変更申請をする場合は、変更点がわかるように申請書に記入します。事業継続力強化計画の申請は、電子申請システム(事業継続力強化計画申請システム)を使います。

電子申請の方法

事業継続力強化計画の申請には、パソコンを使用します携帯電話やスマホからは申請できないため注意しましょう。

申請するために、まずはGビズIDアカウントを取得します。GビズIDアカウントとは、1つのアカウントで各行政サービスにアクセスできる認証システムのことで、取得に2週間程度かかります。GビズIDアカウントが取得できたら、システムにログインし、ユーザー情報を登録します。

初めて事業継続力強化計画を申請する場合は、「新規申請」から表紙、名称等などの必要な項目に入力していきます。この際に、以下の点に注意しましょう。

  • 自社の事業活動の概要:事業内容をわかりやすく記載
    事業活動やサプライチェーン、地域経済における役割が記載されていない場合、計画書の不備として認定されない可能性があります。
  • 事業継続力強化に取り組む目的:自社が被災した場合の影響について記載
    サプライチェーンや地域経済への影響、従業員に対する会社の姿勢を明記します。
  • 事業継続力強化に資する対策及び取組:現在と今後の取り組み案を記載
    税制優遇の対象となる設備導入、日本政策金融公庫の融資を考えている場合には、使途や資金調達方法を記載します。

記入内容に誤りがないことを確認してから申請を行い、申請書の控えはダウンロードして保存します。内容に不備がある場合は、担当局からメールが届くため、なるべく早く対応しましょう。審査が完了すると、通知のメールが届きます。

連携事業継続力強化計画の申請

連携事業継続力強化計画を新規申請する場合には、以下の書類が必要です。

  • 申請書(原本)
  • チェックシート
  • BCPなどの参考書類がある場合はその書類
  • 返信用封筒
  • 連携者に大企業がいる場合には当該企業の同意書
  • 既に連携企業間での協定書がある場合は協定書の写し

2回目以降の申請については、上記に加えて実施状況報告書、直近の「(連携)事業継続力強化計画認定書」の写し、直近の「(連携)事業継続力強化計画の写し」が必要です。

申請の際などの注意点

申請の際に注意したい点として、計画申請から認定までの標準処理時間が、約45日であることがあげられます。優遇措置などの申請を検討している場合には、認定を受けるまでに時間がかかることを念頭に置いておく必要があるでしょう。認定時に提出した計画は、実施期間が3年以内とされています。実施期間内の変更については変更申請を行い、実施期間が過ぎた場合には新たに認定申請を行わなければなりません。

また、認定通知書の再発行はできませんので、大切に保管してください。電子申請で受け付けた場合は、認定通知書を申請者自身が出力する形になり、押印は省略されます。

認定を受けた中小企業者と連携事業者(大企業など)は、「事業継続力強化認定ロゴマーク」をホームページからダウンロードして使用ができます。ただし、マークの色を変えたり、回転、影をつけたりすることはできないため注意が必要です。また、金融支援や税制措置を受けることを目的として、事業継続力強化計画を提出する場合には、あらかじめ日本政策金融公庫、信用保証協会などの関係機関に相談することとされています。

認定企業になることのメリット

事業継続力強化計画の認定制度によって経済産業大臣から認定を受けると、認定企業として事業者名などが中小企業庁のホームページで公表されます。そのため、自然災害が発生した際に、事業の継続・早期復旧するための対策が十分に行われていることを顧客や取引先などに示すことができます。

また、認定企業になると、認定ロゴマークを活用した広報・販売活動が認められます。顧客や取引先へのアピールになるだけでなく、低利融資などの金融支援、防災・減災設備に対する税制措置、補助金の加点などの支援措を受けることも可能です。ここでは、税制優遇や金融支援、補助金の加点や損害保険料の割引についてお伝えします。

税制優遇

事業継続力強化計画の認定を受けると、計画にしたがって取得した一定の設備について取得価額の18%の特別償却が受けられます(令和741日以降に取得する場合は16%)。対象となる設備は、100万円以上の機械及び装置のうち、自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置などです。このほか、60万円以上の建物附属設備として、貯水タンク、止水板、防水シャッターなどが含まれます。

なお、前3事業年度の平均所得金額が15億円以上の法人などは適用除外となります。

金融支援

認定企業が受けられる金融支援として、日本政策金融公庫による低利融資とスタンバイ・クレジット、中小企業信用保険法の特例、中小企業投資育成株式会社法の特例があげられます。事業継続力強化と関係のない設備の投資には適用されません。税制優遇と同様に、対象企業や資本金の額によっては融資が受けられないケースもあるため、事前に適用対象者について確認しましょう。

補助金の加点

認定企業になると、ものづくり補助金、事業再構築補助金(サプライチェーン型強化枠)、IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠)など、特定の補助金の審査を受ける時、加点措置を受けることができます。また、災害で被災した際に事業復旧に必要な費用を申請できる補助金制度では、申請の際に事業継続力強化計画の認定が必要なものもあります。災害時に復旧資金を得るためにも、事業継続力強化計画の認定を受けるメリットは大きいでしょう。

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損害保険料の割引

損害保険会社のなかには、事業継続力強化計画の認定を取得した事業者について、保険料の割引を行う企業があります20235月時点で、損害保険会社9社が保険料の割引を行っており、中小企業が災害対策について積極的に取り組めるようサポートしています。

事業継続力強化計画の策定方法

事業継続力強化計画は、6つのステップを経て作成します。詳しく見ていきましょう。

ステップ1:目的を明確化

計画を策定する際には、まず目的をはっきりさせることが重要です。目的を記入する際には、事業継続力強化計画作成指針にもとづき、自社が事業継続力を強化することが、災害などが起きた時、経済にどのような影響を与えるかを考えましょう。

地震や台風などの自然災害、感染症のまん延、IT化によって事業環境は著しく変化しています。また、中小企業が被災することで、従業員と家族、顧客や取引先、地域の人々に大きな影響を与えます。こういったさまざまな状況を踏まえて目的を明確化することが大切です。

ステップ2:災害リスクの確認

ハザードマップなどを活用しながら、自社の事業所や工場がある地域の災害リスクについて確認しましょう。ハザードマップは自治体のホームページなどから見ることができます。人(人員)・もの(建物・設備・インフラ)・金(リスクファイナンス)・情報の4つの観点から、自社にどのような影響があるかを検証しましょう。

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ステップ3:初動対応の検討

災害が発生した直後の初動対応について検討します。人命の安全確保、非常時の緊急時体制の構築、被害状況の把握・被害情報の共有についての取り組みが求められます。

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ステップ4:経営資源に関する取り組み

災害リスクの確認の際に検証した、人・もの・金・情報といった経営資源への影響を踏まえ、事前にどのような対策をとれば良いか考えます

ステップ5:平時の取り組み

事業継続力を強化するには、訓練など、平時の取り組みが大切です。平時の推進体制に経営陣が加わること、年に1回以上、訓練や教育の機会を設けること、計画の見直しを年1回以上行うようにしましょう。

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ステップ6:感染症やサイバー攻撃への対策

染症のまん延のリスク想定としては、顧客の外出自粛による売上減少が考えられます。事前対策として、マスクなどの備蓄品の用意や在宅勤務のための環境整備が考えられます。事後対策には時差出勤などがあげられます。

サイバー攻撃のリスク想定としては、システムの停止やデータの漏えいが考えられます。事前対策として、異常監視サービスやウイルス対策ソフトの導入、事後対策として、関係者や顧客への報告があげられるでしょう。

まとめ

災害などのトラブルが発生した時、事業を早期復旧・継続するため、かつては中小企業に対してもBCPの策定が推奨されていました。しかし、人員も資金も限られている中小企業が範囲も分量も膨大なBCPを策定するのは難しいため、より簡単にできる事業継続力強化計画の制度ができました。

中小企業は事業規模が小さくても、サプライチェーンに組み込まれ、地域経済と密接な関係を持っています。また、現在はICT化の進行により、ビジネスのスピードはどんどん速くなっています。このため、災害などで事業が停止した際には、国内のみならず、海外にも影響が及ぶ可能性があるでしょう。

事業継続力強化計画の申請書は、A4の書類数枚を記入すれば完成します。範囲も広く、膨大な文書をまとめるBCPに比べると、はるかに取り組みやすいといえるでしょう。また、災害などのトラブルへの対応能力を高めるだけでなく、自社が抱える課題の発見など、経営の改善につなげることも期待できます。

既にBCPを策定したものの、うまく活用できていない中小企業があるかもしれません。その場合は、新たに事業継続力強化計画を策定してみることを検討してもよいでしょう。

南海トラフ巨大地震や首都直下地震が懸念され、サイバー攻撃や感染症のまん延(パンデミック)などリスクも複雑化するなか、取り組みを先送りせず、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

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