地震が起こると、建物の倒壊や場合によっては津波を引き起こすなど、大きな被害を招きます。このような地震による被害は「二次災害」と呼ばれます。地震による二次災害の種類や対策について理解し、備えておきましょう。
本記事では、地震による二次災害の種類や、事前にできる対策、発生したときの対策、発生後の対策を紹介します。
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二次災害とは
二次災害とは、最初に発生した災害を導線に、別の災害が発生することをいいます。たとえば、大雨により地盤が緩んだ山が土砂崩れを起こして、民家を崩壊することも二次災害に含まれます。また、海や山で遭難した際に、出動した救助隊が被災してしまうことも二次災害と呼ばれます。
災害はほとんどの場合二次災害を引き起こしますが、ここからは「地震」がどのような二次災害が引き起こすのかを紹介します。
地震による二次災害の種類
地震によって引き起こされる二次災害は、場合によっては最初に発生した災害よりも影響が大きくなります。地震による二次災害の種類を、「大都市において予測される二次災害」「地域に関係なく予測される二次災害」に分けてみていきましょう。
大都市において予測される二次災害の種類
ネットや電話の接続不良
ネットや電話の接続不良による通信障害は、以下のような問題を引き起こします。
- 家族の安否確認ができない
- 地震や津波の情報・生活物資の情報が入手しづらい
「総務省」が公表した「平成 23 年版 情報通信白書」では、2011年に発生した東日本大震災により、固定通信(固定電話やパソコンの通信)では約190万回線の通信回線が被災し、移動通信(携帯やスマートフォンなどの通信)では合計約29,000局の基地局が停止しています。
道路が渋滞し動かなくなる
地震により道路が渋滞することで、例えば以下のような問題が引き起こされます。
- 救急搬送が必要な人の救助に遅れる
- 消火が必要な火災現場への出動が遅れる
これらの事態を防止するためにも、地震発生時の車での移動は控えることが原則です。
地域に関係なく予測される二次災害の種類
火災や津波、地割れなど
地震の二次災害で引き起こされる火災や津波、地割れは、人命を奪う被害にもつながります。地震により避難しようとしている人が、二次災害により避難経路が奪われて避難に遅れるなどといった問題も起こります。
建物の崩壊やそれによる落下物
二次災害による建物の崩壊や落下物により、人命に影響を与える事故に結びつく、避難経路を阻害するなどの問題にもつながります。老朽化した建物や看板は特に、崩壊や落下のリスクが高くなります。
電気やガス、水道などのインフラの停止
電気やガス、水道などのインフラが停止することで、地震から避難した後の避難先での生活に影響を及ぼします。たとえば、寒い・暑いなど体温調節が難しくなる問題や、水道が使えず衛生面での問題につながります。
東日本大震災では、電気は約1週間、水道は約3週間、ガスは約5週間の復旧期間を要しています。
電車が止まる
電車が止まることによって、通勤や通学などの交通網に影響が出ます。電車が止まった際の移動手段として、車や徒歩、自転車などの移動手段を持っておくことが大切です。ただし、避難の際には車移動は推奨されていません。
避難場所でのエコノミー症候群やストレスやショックによる心身の不調
避難場所では色々な人々が同じ空間で生活することになります。心身共にストレスを感じて体調不良を感じたり、また、車中泊を続けている人は「エコノミー症候群(※)」を引き起こすこともあります。東日本大震災では、被災者の下肢静脈エコー検査によって深部静脈血栓症が受信者の35%に発見されたデータも出ており、被災とエコノミー症候群は密接につながっていると言えます。
参考:東日本大震災被災地でのエコノミークラス症候群|植田 信策
※エコノミー症候群……下肢などにできた血栓が原因で肺の血管を閉塞し、ショック、心停止などの重篤な症状につながります。
液状化現象
液状化とは、地震が発生して地盤が強い衝撃を受けると、今まで互いに接して支えあっていた土の粒子がバラバラになり、地盤全体が液体のような状態になる現象のことです。液状化が発生すると、以下のような問題が起こる可能性があります。
- 地盤から水が噴き出す
- 地盤の上に立っていた建物が沈む
- 地中に埋まっていたマンホールや埋設管が浮かんでくる
直接的に人命に関わることは少ないとされていますが、液状化現象により居住している建物が崩壊する危険もあるため、十分に注意する必要があります。
過去の大地震で実際に起きた二次災害
実際に、過去には地震によってどのような2次災害が引き起こされたのでしょうか。
【1995年】阪神淡路大震災 地震発生に伴い発生した火災
阪神淡路大震災では、地震による火災で亡くなった方は559人、火災発生件数は285件、焼損棟数483棟といわれています。この火災発生件数285件のうち、建物火災件数が92%と大半を占めており、当時の神戸市内だけでも157件の建物火災が発生しています。そのうちの原因が特定できた55件のうち33件が通電火災でした。地震発生に伴い発生する火事原因のうち、全体の51%は電化製品の誤作動や破損によるものといわれています。
【2016年】熊本地震による、宅地の液状化現象
2016年に発生した熊本地震では、2回にわたる震度7の強い揺れにより、低地や地下水位の高い地域で、液状化被害が発生しました。
液状化により、外構の沈下・傾斜や、戸建住宅や店舗の沈下、建物の基礎杭の抜け上がりやそれに伴う埋設管の破損など、建物に関する被害や、電柱の被害が多く報告されました。
【2017年】大阪地震による壁の倒壊
2017年の大阪地震による建築物の被害状況は、住家被害は2府5県で全壊が計12棟、半壊が計273棟、一部損壊が計41,459棟にのぼりました。全壊の12棟は、主に宅地被害によると見られるものが9棟、上部構造の被害によると見られるものが3棟でした。
【事前にできること】地震による二次災害への対策
避難ルートや避難場所を確保する
地震発生時にパニックにならず、落ち着いて避難できるように、避難ルートや避難場所は事前にチェックをして家族にも共有しておきましょう。もしも家族でばらばらに避難をした場合でも、集合できる場所を事前に共有しておけば安心です。
ハザードマップを確認する
どこまでが危険で、どこが安全圏内であるかをハザードマップで事前に確認しておくと、避難時もスムーズです。
ハザードマップは市区町村で配布していることが多いので入手して家族で確認しておくと安心です。ハザードマップの内容も定期的に更新されるので、常に最新のものを用意しておきましょう。
家具の固定・ガラスの保護をする
大型の家具家電は、地震が発生すると倒れる危険があるので、事前に固定をしておきましょう。固定にはL字式金具やベルト式器具、耐震マットやシートなどがおすすめです。
窓や扉のガラス部分には、保護シートを貼っておくと割れた時に飛び散りにくくなり、ガラスの破片などでけがをすることを防げます。
防災グッズの備蓄をする
ライフラインがストップした時のことを考えて、防災グッズを用意しておきましょう。
防災グッズは家族分用意をしておきましょう。災害発生時にすぐに持って出られるところに用意しておき、全員が防災グッズの位置を把握しておくことが重要です。防災グッズの中身は定期的に見直しましょう。
防災グッズの記事へリンクを貼ってください
感震ブレーカーを設置する
地震発生で起こる火災の半数以上は、電気によるものと言われています。震災時には慌てておりブレーカーを落とす余裕がないことも考えられるので、備えとしてブレーカーが自動オフになるように、感震ブレーカーを設置することがおすすめです。
感震ブレーカーには「分電盤タイプ(内蔵タイプ)」「コンセントタイプ」「簡易タイプ」があります。住んでいる家に合わせて感震ブレーカーを選びましょう。
【発生時にすべきこと】地震による二次災害への対策
家の中にいる時は慌てずに対応をすることが第一
家具の移動や落下物から身を守るため、一番に頭を保護しましょう。まずは扉を開けて避難路を確保し(地震が大きい場合は動き回らないようにしましょう)、大きな家具から離れ丈夫な机の下などに隠れ地震が収まるのを待ちます。あわてて外に飛び出すことは非常に危険です。。
火元を消す
料理や暖房などで火を使っている場合、その場で火を消せるときは火の始末をしましょう。火元から離れているときに無理に火を消しに行くと、倒壊物の被害に巻き込まれることがあるので危険です。
屋外へ避難するときには、電気による火災発生を防ぐためにもブレーカーを落とすことを忘れないようにしましょう。
商業施設にいる時は慌てず従業員の指示に従う
商業施設にいる時に地震が発生した場合、多くの人がいる分周囲の流れにのみ込まれそうになることもありますが、まずは従業員の指示に従いましょう。
施設では天井の電気が落下する危険性があるので、電気の下からなるべく離れ、慌てて出口に殺到しないよう注意が必要です。
屋外では危険な所から離れる
屋外にいる時に地震が発生した場合、ブロック塀や看板は倒壊する可能性があるので離れましょう。山や崖の近くにいる場合も、崩れる危険性があるので離れるようにしましょう。海辺の近くにいる時には、二次災害で津波が発生する心配があるので、高いところに避難します。
車にいる時は急ブレーキをかけない
地震発生時に車を運転していることもあるかもしれません。車を運転している時は、急ブレーキを踏まず緩やかに減速し、ハザードランプを灯し路肩に停車させましょう。急ブレーキをかけると、後続車との玉突き事故につながる可能性があり危険です。
家に限らず、車内にも防災グッズを常備しておくことで、万が一避難時に車中泊になった際にも、安心して過ごすことができるでしょう。車に積んでおくと役立つ防災グッズについては、以下の記事で詳しく解説しています。こちらも併せてご覧ください。
【地震の発生後】二次災害への対策
地震発生後はしばらくの間は再度地震が起こることも考えられるため、いつでも避難できるように準備しておきましょう。
古い建物や山は地震による地盤のゆがみで崩れる可能性があるので、しばらくは必要がない限りは近づかないように気を付けましょう。時差で津波が発生することもあるので、海や川に近づいて様子を見に行ってはいけません。
地震発生後に自宅へ戻り修復作業をする際にも、二次災害に巻き込まれないように気を付けるポイントがあります。
電気の復旧時には、停電した状態から急に電源を入れることで通電火災が発生する恐れがあるので、まずはブレーカーが切れていることを確認し、アンペアブレーカー、漏電遮断器、安全ブレーカーの順に入れましょう。
ガスも、万が一ガス漏れしている場合爆発や火災などの危険があるので、まずは全てのガス機器の使用を止め、復帰ボタンを押し、ランプの点灯が確認できてから使用を再開しましょう。
片付けや修復作業をする時には、マスクなどをしてほこりなどを避け、釘や木材などでけがをしないような服装で行いましょう。なお、災害後には修復作業の請負いを装った詐欺が多発する傾向があるので、それらにも十分注意が必要です。
まとめ
地震による二次災害は、時に一時災害よりも甚大な被害をもたらすことがあります。二次災害で起こりうる災害を事前に知り、対策を考えておくことが大切です。発生時の対策や避難経路も、家族で話し合っておくと安心ですね。
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全国各地を転々と暮らすWebライター。主に、スポーツ、キャリア系メディアで執筆中。
広告代理店勤務時代はオフライン、オンラインイベントを多数企画運営していた経験も。
特技はマラソンで、フルマラソン2時間53分台の記録をもつ。