日本は周りが海に囲まれており、地形、地質、気象などの条件から災害が発生しやすい国です。近年では、洪水、浸水をはじめとする水害が問題になっています。家が浸水してしまうと、室内の家具や家財が使用不可能になったり、汚泥が屋内や床下に侵入したりするなどの被害を生じます。水害は突然起こるため、日ごろから十分に対策することが大切です。
今回は、浸水対策に役立つおすすめのグッズ5選から、「自宅に浸水対策が必要かどうか」を判断する方法まで詳しく解説します。浸水対策に備えたい人は、ぜひ参考にしてください。
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浸水対策が必要な理由
日本は、島国であるがゆえ、水害リスクが高い国です。国土交通省で2018年に発表された『水害リスクの現状』によると、「人が住むことができる土地をより安全な土地にする治水対策が必要」と警鐘を鳴らしています。日本で生活を送る場合は、居住する地域に限らず浸水対策は必須といえるでしょう。
実際に、2015年に起きた関東・東北豪雨では、大雨による河川からの越水、溢水に加え、鳴瀬川水系渋井川の堤防が決壊するなど大規模な浸水被害が発生しました。関東地方の被害は、死者6名、全壊76棟、半壊6,450棟、一部破損33棟、床上床下浸水11,151棟に及ぶほどです。
このような豪雨は突然生じる可能性が高いため、日ごろから浸水対策に取り組み、命と家財の安全確保に努めましょう。
自宅に浸水対策は必要?判断する方法
浸水対策は、まずは居住する地域のハザードマップを確認することからはじめましょう。
ハザードマップとは、被災想定区域や避難所、避難経路などを表示した地図のことを指します。自然災害による被害の軽減や、防砂に使用するために作られました。ハザードマップで色が付いている部分は、浸水・土砂災害の危険性が高く、浸水対策が必要な場所です。
ハザードマップでは「自宅の浸水深」「自宅近くの避難所」を確認しましょう。
ハザードマップで色が付いている地域に住んでいる場合、水害が起きた際に、状況に応じて自宅の外へ避難する必要があります。また、色が付いていない地域の場合でも、周辺地域と比べて土地が低かったり、崖が近かったりする際は、市区町村からの避難情報などを参考に、安全な地域に避難する必要があります。
ここでは、浸水した際に自宅に留まっていた方がよいケースと、避難タイミングの目安をお伝えします。
浸水しても自宅に留まっていたほうがよいケース
自宅が家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない場合や、浸水深より居室が高い場合、そして水位が下がるまで十分な食料・水の備えがある場合は、浸水しても自宅に留まるほうが安全な可能性があります。
ただし、家屋倒壊等氾濫想定区域や浸水継続時間は、ハザードマップに記載がない場合があります。詳細は、居住地の自治体へ直接問い合わせてみましょう。
避難タイミングの目安
避難タイミングの目安は「警戒レベル3や4」です。安全な地域にいる場合は、焦って避難場所に移動せずに自宅に留まりましょう。
避難先は小中学校や公民館などの、市区町村が指定する「指定緊急避難場所」のほか、知人・友人宅が選択肢になります。水害が起きたときのことを想定し、事前に「どこへ」「どのように」避難するかを家族で相談して決めておくのがおすすめです。
出典:水害ハザードマップの利活用事例集|国土交通省(PDF)
ハザードマップの活用方法
ここではハザードマップについて紹介します。ハザードマップは各自治体によって着色パターンや記載内容が異なるため、記載内容の示す意味などの詳細は各自治体のハザードマップを参照してください。
ハザードマップの入手方法
ハザードマップは、市役所防災政策課や市民センター、公民館の窓口などで入手できます。また、国土交通省が運営するハザードマップポータルサイトから確認することも可能です。
ハザードマップの見方
ハザードマップの着色パターンは自治体によって異なる場合があるので、引っ越しなどで居住地が変更した場合などでは、特に注意して記載内容の示す意味などを確認しましょう。ハザードマップの記載内容の見方や意味がわからない場合は、自治体へ問い合わせるのがおすすめです。
自治体によっては、各ハザードマップの見方や活用方法を解説する講習をはじめ、ハザードマップを活用した避難訓練に取り組んでいる場合もあるため、居住地の情報を確認してみるとよいでしょう。
上記はハザードマップポータルサイトに掲載されている、東京都足立区周辺です。黄色や赤色で色付けされているのは、洪水浸水想定区域を指しています。黄色から紫色にかけて、水深が上がることを表しています。
ハザードマップにて洪水浸水想定区域に居住していたり、勤務、通学していたりする場合は、浸水対策グッズを備えるだけでなく、水害発生の危険性が高まったときにはすぐに避難場所へ逃げられるよう準備を整えておきましょう。
自宅を守るための浸水対策グッズ5選
居住地域が場合、洪水浸水想定区域に該当する場合、住宅への浸水を防止できるグッズを備えておくことも大切です。ここでは、住宅への浸水を防ぐために役立つ止水対策グッズについて、止水できる高さとともに紹介します。
※ただし、止水可能な高さは、それぞれの製品や環境、水量などによっても異なるため、あくまで目安として参考にしてください。
| 特徴 | 止水の高さ |
1. 土のう | ・ 土や砂が入った袋が水を含んで固まることで、屋内への水の浸入を防ぐ ・ もっとも手軽な浸水グッズ ・保管場所が必要 | 低(1段で約12cm) |
2. 吸水土のう | ・ 水に浸すと膨張する土のう ・ 普段はコンパクトに収納できる ・ 再利用は不可 | 低(1段で約14cm~10cm)
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3. 吸水シート | ・ 置くだけで水を素早く吸い取る ・ 地下への浸水、ドアや窓からの浸水に便利 ・再利用は不可 | 低(1段で約14cm~10cm)
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4. 防水シート | ・ 軽くて力が弱い人でも簡単に取り付けられる ・ コンパクトに収納できる ・ 取り付けに時間がかかる ・ 製品によっては固定のために土のうやテープが必要 | 中から高(70cm~130cm) |
5. 止水板 | ・ 緊急時にすぐ使える ・ L字型止水板なら手軽に持ち運びが可能 ・ 価格が高額 | 高(約50cmから約100cmほど) |
1.土のう
土のうは、土や砂が入った袋であり、水を含み固まることで体積と重量の塊を作り出すことができるのが特徴です。土のう同士を密接させて積み上げることで、頑丈な防壁や重石の役割を果たし、屋内への浸水を防ぐことに役立ちます。もっとも手軽な浸水対策グッズであり、導入しやすいものの1つです。
土のうは通販やホームセンターで取り扱っています。一部の市では土のうを配布している場合があるので、居住する地域の取り組みについて情報収集しておきましょう。
使い方は、水が浸入しやすい門や車庫、ドアの前、地下室の入り口など水が浸入しやすい場所に、土のうを置くだけです。土のうには土や砂が入っているため、保管場所が必要になりますが、手軽に浸水対策ができます。
2.吸水土のう
吸水土のうは、ポリアクリル酸ナトリウムが詰められており、水に浸すと膨張する仕組みになっています。土や砂は入っていません。未使用時は、コンパクトに収納できるため、土のうの保管場所の確保が難しい場合に最適なグッズです。水に触れるとすぐに膨張するため、緊急の場合にも素早く対応できるメリットがあります。
使い方は、土のうと同様に水が浸入しやすい場所に設置するだけ。しかし、吸水土のうは再利用不可である点に気を付けましょう。
3.吸水シート
吸水シートは、設置するだけで素早く吸水するグッズです。地下への浸水や天井からの雨漏り、ドアや窓からの浸水に使用できます。使い方は、水溜まりに吸水シートを設置するだけ。目安としては、1シート当たり7Lほどの量を吸水可能な商品が多いようです。
軽く薄いシート状であるため、コンパクトに保管できる点が特徴です。しかし、こちらも使用後の再利用はできないため注意しましょう。
4.防水シート
防水シートは、玄関などの扉を覆うことで水の侵入を防ぐグッズです。防水シートは、軽い素材でできており、防水テープなどで固定して設置するだけであるため、力が弱い人でも簡単に取り付けられます。
また、防止シートは折りたたんでコンパクトに収納可能であり、直射日光を避けた冷暗所で保管すれば、約5年使用できます。
しかし、濡れた地面やコンクリートなど凹凸の多い場所は取り付けられません。使用可能な場所は、防水テープで十分に固定できるところのみであることを理解しておきましょう。
5.止水板
止水板は、緊急時にすぐ設置できる浸水対策グッズです。特徴は、何度も繰り返し使用可能であり、折りたたみ式のものはコンパクトに収納できる点です。保管する場合は、直射日光や高温多湿な場所を避けましょう。
使い方は、止水板を折りたたんだまま浸水を防ぎたい場所に運び、使用したい場所で組み立てます。止水板は水の重みで止水するため、風が強い天候の場合は飛ばされないように重たい物を利用して十分に固定しましょう。使用後は水で全体を洗い、十分に乾燥させてから収納します。
ネットショップやホームセンターで購入できますが、他の浸水対策グッズよりも高価です。しかし、繰り返し使用可能な点を考慮すると選択肢の一つとなるでしょう。
水害でライフラインが止まったときに必要なグッズ
屋内への浸水を防げても、水害の程度によってはライフラインが止まる場合もあります。浸水対策グッズに加えて、ライフラインが止まった場合にも備えましょう。
【備蓄グッズリスト】
水・食料 | ・ 飲料水+調理用水3日分(1人1日3リットルが目安) ※ 湯せん、食品や食器を洗う水は別途必要 ・非常食3日分 ご飯(アルファ米など)、缶詰、ビスケット、板チョコ、乾パンなど |
衛生用品 | ・ 救急セット、マスク、手指消毒用アルコール、常備薬は必須 ・ 除菌ウエットティッシュ、口内洗浄液、歯磨きシート、ウエットボディタオルがあれば便利 ・ 女性の場合は生理用品、幼児・高齢者がいる場合は紙おむつ |
生活用品 | ・ トイレットペーパー、ティッシュペーパー、カセットコンロ、カセットボンベなど ・ 水道や電気が完全に止まった場合に備えて、非常用トイレ・懐中電灯も必要 ・ 乾電池、充電器、ラジオ(手回し充電式だと便利) |
出典:災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~ | 首相官邸ホームページ
1.水・食料
準備しておくべき水の量は、飲料水と調理用水をあわせて3日分です。湯せんや食品・食器を洗う水は除き、1人1日3Lが目安です。飲料水は、消費期限があるため、管理の手間を省くためにもできる限り長期保存水を選ぶのがおすすめです。
食料は、1人あたり3日分を準備しましょう。アルファ米などのご飯や缶詰、ビスケット、板チョコ、乾パンなど調理しなくてもすぐに食べられるものがおすすめです。
2.衛生用品
必ず常備薬を準備しておきましょう。普段から利用しているサプリメントなども併せて準備しておくと、体調管理のためにも安心できます。他にも、救急セット、マスク、手指消毒用アルコールがあるとけがをしたときや感染予防にも役立ちます。
ライフラインが止まると入浴や洗顔、歯磨きができなくなります。除菌ウエットティッシュや口内洗浄液、歯磨きシート、ウエットボディタオルなどを準備しておくと身体の清潔を維持するために役立ちます。女性では生理用品、小さなお子さんや高齢者がいる場合は紙おむつなども忘れずに準備しましょう。
3.生活用品
トイレットペーパー、ティッシュペーパー、カセットコンロ、カセットボンベも準備しておくべきグッズです。ライフラインが止まった場合に備えて、非常用トイレ・懐中電灯も準備しておきましょう。
乾電池、充電器、手回し充電式のラジオなどがあれば、地域の情報を入手できます。正確な情報を入手して避難生活を乗り越えるためにも準備しておくと安心です。
水害で避難する際に役立つグッズ・服装
ハザードマップを確認し、水害時に自宅に留まるのは危険であることがわかった場合は、すみやかに近くの避難所へ避難しましょう。ここでは、避難する際に役立つグッズを紹介します。
1.最低限の食料・衛生用品・生活用品
避難する際は、非常用持ち出し袋があれば便利です。下記の表を参考にして、非常用持ち出し袋を準備しておきましょう。
【非常用持ち出し袋の中身リスト】
食料品 | 携帯食 (チョコレートや栄養補助食品等) |
飲料水 (大人1人あたり500ml程度) | |
生活用品 | 常備薬 |
携帯電話の充電器 | |
懐中電灯 | |
携帯ラジオ (手回し式や乾電池式がおすすめ) | |
乾電池 | |
衛生用品 | 携帯トイレ |
マスク | |
手指消毒液 | |
その他 | 笛やブザー |
公衆電話用の現金(10円玉や100円玉を用意) | |
防災地図 |
出典:いざという時に備えて、非常用持ち出し袋を準備しましょう/荒川区公式サイト
非常用持ち出し袋は、両手を空けることのできるリュックがおすすめです。袋の中身は定期的にチェックし、使用期限や賞味期限が切れてしまう前に新しいものへ交換しましょう。
2.ヘルメット・防災ずきん
水害では、水位など足元ばかりに意識が向きがちですが、天候によっては頭上から何かが落ちてくる危険性もあります。非難中のけがを防ぐことも大切です。ヘルメットや防災ずきんを使用し、頭も保護しながら避難所へ向かいましょう。
ヘルメットや防災ずきんを準備できない場合は、帽子をかぶるだけでも頭を保護することに役立ちます。
3.服装は長袖・長ズボン
避難するときの服装は、けがを防ぐために肌の露出を抑えた長袖・長ズボンがおすすめです。水害時は、足元が濡れることを考慮して長靴を選ぶ人もいるかもしれませんが、長靴は水の流れに足を取られてしまやすくなります。そのため、避難するときは履きなれている靴を選び、素早く避難所に到着できるようにしましょう。
また、体が濡れると体温が低下し、体力が奪われてしまう危険性があります。そのため、避難するときには防災レインコートを使用し、着替えも準備しておくとよいでしょう。
まとめ
日本は周りが海に囲まれているため、水害が生じやすい国です。水害に備えて居住する地域のハザードマップを確認し、浸水対策の必要性や程度について検討しましょう。
浸水対策グッズは種類にもさまざまな種類があり、安価で手軽に準備しやすい土のうから、比較的高価な止水版まで価格にも違いがあります。また、水を素早く吸収できる使い切りの吸水シート、繰り返し使用できる止水板など、特徴も異なります。当記事を参考にそれぞれの居住地や住宅の構造に適した浸水対策グッズを選び、水害に備えましょう。
また、水害時は自宅に留まる場合、避難所への避難する場合の両者を想定し、状況に応じた適切な行動を取れるように、備蓄品や非常用持ち出し袋を準備しておくことが大切です。
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