防災において、もっとも重要な備蓄品といえるのが「食料」です。
大きな災害が発生すると、近隣のお店は休業してしまうことがほとんどです。営業再開の見通しが立たないおそれもありますので、一定期間は自宅で備蓄しておいた分で命をつなぐ必要があります。
しかし、食料品を備蓄するにあたり、「とりあえず食べ物があればよい」と考えるのは危険です。
防災のために食料を備蓄するのであれば、きちんと「備蓄に適した食料」を中心にそろえていく必要があります。
本ページでは、防災の基本として、備蓄すべき食料についてご紹介します。具体的な事例にも触れながら解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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防災に向いている備蓄食料とは
そもそも、どのような備蓄食料が向いているのでしょうか。
まずは、防災において把握しておきたい備蓄食料の条件について解説します。
火を使わない
防災の備蓄に向いている備蓄食料として、まず挙げられるのが「火を使わなくても食べられる食料」です。
火を通さないと食べられない食料は、非常食に不向きです。災害現場では、必ずしも火を使えるとは限りません。自宅避難をしていても、ガスがストップしている場合があります。
そのため、火を使わなくてもそのまま食べられるような備蓄食料が向いています。食料品を購入する際には、「火を使わなくても食べられるか」など食べ方をチェックしておきましょう。
洗い物が少ない
備蓄に向いている食料品の一つが、「洗い物が少なくて済む食品」です。
被災生活中は、十分に水を確保できない場合がほとんどです。調理の際の洗い物をその場で洗えるとは限りません。
そのため、洗い物を極力減らすためにも、「洗い物が少なくて済む食品」を選びましょう。たとえば、パッケージがそのままお皿代わりになるものや、開封してそのまま手で食べられるものなどがベストです。
また、包丁やまな板、ボウルなどの調理器具が必要になる食品は避けましょう。なるべく調理工程が少ないほうが洗い物も少なく済みますので、購入時のヒントにしてみてください。
すぐに食べられる
防災のために食料を備蓄するにあたり、基本中の基本といえるのが「すぐ食べられる食料を備蓄すること」です。
地震や台風などが発生すると、停電やガスのストップ、断水などあらゆる問題が発生します。そのため、普段通りの調理を行うことが難しくなります。
そのため、「お皿に移さなくてもそのまま食べられる」「スプーンやお箸の必要がない」といった備蓄食料は非常に重宝するでしょう。
小さな子どもがいる場合、お腹を空かせて不機嫌となることがあります。被災生活という慣れない環境の中では、食事の準備に手間取ってしまうかもしれません。そういった事態に陥らないためにも、子どもがすぐに食べられるような非常食を準備しておくことが大切です。
賞味期限が長い
備蓄するうえでの大前提ではありますが、「賞味期限の長い食品」が防災の備蓄品として向いています。
基本的に防災用の備蓄食料に関しては、5年や10年など比較的長い賞味期限が設定されているものです。いつやってくるかわからない災害の現状をふまえると、賞味期限が長いほうが便利でしょう。
とはいえ、賞味期限はいつか切れてしまうものなので、時々見直すようにしましょう。
防災をオンラインで学べるイベント「おうち防災運動会」の一種目「おうち探索!非常食捜索トライアル」は、自宅にある備蓄食料を探し回る競技です。
ゲーム感覚で楽しく備蓄食料をチェックできるので、「うっかりしていて賞味期限を切らしてしまった」という事態を防げます。
また、食料の備蓄には、「ローリングストック」の考え方も活用していきましょう。ローリングストックとは、普段から使え備蓄にも向いている食材を日頃から多めに買っておき、食べたら買い足していく方法です。これなら賞味期限を気にする必要がありません。
防災用の備蓄食料を試しに食べてみるのもよいでしょう。実際作って味見をしておくことで、防災意識の向上にもつながります。
温めなくても美味しい
防災のための備蓄食料として向いているのが「温めなくても美味しい食料」です。
食料によっては「火を通さなくても食べられるけれど、温めないと食べにくい」ものがあります。
温めずに食べられ健康面で問題はなくても、やはり食べるなら「美味しく食べたい」というのが本音でしょう。
とくに、カレーなどのレトルト食品によっては、温めて食べることが前提となっている場合があります。冷たいまま食べると、油のにおいが気になったり、具材が硬く感じたりするなど、食事がストレスになるかもしれません。
なるべく「温めなくても美味しい食品」に注目して、備蓄を進めてみてください。
備蓄食料の選び方
備蓄食料を選ぶ場合、どのようなポイントを意識して選んでいけばいいのでしょうか。
ここからは、備蓄食料の選び方について解説します。
栄養素に目を向ける
備蓄食料を選ぶ際には、「栄養素」に目を向けてみてください。
被災生活中の食事は、栄養が偏りやすいという問題があります。主食・主菜・副菜のバランスが取りにくく、主に主食がメインとなることが多くなってしまうからです。そのため、炭水化物の摂取割合が大きくなってしまう問題があります。
ストレスや健康被害などのリスクが高い被災生活中だからこそ栄養素にはしっかりと目を向けたいところ。なかでも、ビタミンやミネラルなどは不足しがちな栄養素ですので、備蓄食料を購入する際には注意してみてください。
家族の好みに合わせる
備蓄食料は、家族の好みを考えながら選ぶことが大切です。
災害時は「食で命をつなぐこと」が必要不可欠。最低限守らなければならないボーダーラインといえます。しかし、被災生活中とはいえ、好みではない食品を食べ続けるのはストレスを感じます。
場合によっては、食欲不振につながってしまいますので、備蓄食料選びでは家族の好みも反映させてください。
「和食が好き」「麺類が好き」「こってり系のおかずが好き」など、家族の好みに合わせることで、被災生活中も楽しい食事に近づけやすくなるでしょう。
さまざまなバリエーションを意識する
食料を備蓄する際には、さまざまなバリエーションを意識して購入することをおすすめします。
「缶詰系」「麺類系」など、似たような非常食を毎日食べていると、どれだけ好物であっても飽きてしまうものです。
ただでさえ、避難生活中はストレスを感じやすくなります。少しでも気分転換になるようバリエーション豊かな非常食を取り入れましょう。
また、いろいろな種類の非常食を用意することで、摂取できる栄養素が増えることにもつながります。「和食」「洋食」といったジャンルでバリエーションを増やしたり、「米」「パン」「麺」などさまざまな種類に目を向けてみたりしてみてください。
防災のための備蓄食料例
防災のために備蓄を始めたいと考えている方向けに、ジャンル別におすすめの食料例をご紹介します。
各項目でどのような備蓄食料があるのか、どんな食料がおすすめなのかなどをチェックしてみてください。
主食系
備蓄食料の基本となる「主食系」は、定番の「パックご飯」のほか、食欲不振の場合でも食べやすいおかゆや、気分転換にしやすいパン系がおすすめです。
パン系だと、近年缶詰タイプでさまざまな菓子パンも登場しています。おやつ感覚でエネルギーを補給できますので、子どもや若い世代の方にもおすすめです。
また、ご飯に関しては、ふりかけやお茶漬け、リゾットなどあらゆるアレンジをしやすいため、簡単に調理できるようなものも一緒に備蓄しておくと良いでしょう。
主菜系
主菜系の食料を備蓄する場合は、カレーが定番ですが、ほかにも「煮物」「焼き鳥」「サラダチキン」など、バリエーション豊かな食料が展開されています。
防災用として販売されているものでなくても、「コンビーフ缶」「ツナ缶」「魚肉ソーセージ」などもおすすめです。
普段の食料として使うことが多い食料であれば、ローリングストックもしやすくなります。
なお、冷凍食品で備蓄するといったケースも見られますが、停電が発生するリスクをふまえると、好ましくありません。
基本的に、常温保存できる食品に絞って備蓄を進めましょう。
野菜・果物系
野菜や果物は、被災生活中に不足しやすい食料です。
「コーン缶」「ビーンズ缶」など、普段から目にする食料品を備蓄するほか、乾燥野菜も取り入れることがおすすめです。防災用として、栄養豊富な乾燥野菜も展開されていますが、「具だくさんの即席みそ汁」も野菜が豊富な傾向にあります。
果物は、「缶詰」としてミカンや桃、パイナップルなどが多く販売されています。
乳製品
普段から牛乳を飲むことが多いなら、被災生活中もなるべく取り入れたいと考えるもの。そんなときには、「スキムミルク」を取り入れてみてください。牛乳の持つ良質なたんぱく質やカルシウムなどは、スキムミルクにも含まれています。
粉末タイプですので、風味は本物の牛乳とは若干異なります。
他にも「乳製品の栄養素」として考えるなら、常温保存できる粉チーズも選択肢の一つとなるでしょう。
大豆食品
大豆食品は意外にも選択肢が多いです。
豆乳飲料の多くは常温保存が可能であるうえに、飲みきりサイズも豊富。乾燥タイプの高野豆腐や豆の甘煮缶など、さまざまな大豆食品を取り入れることができます。
大豆は良質なたんぱく質を豊富に含みますので、被災生活中にも積極的に取り入れていきたい食品です。
汁物
防災用に汁物を備蓄するなら、「レトルトスープ」「即席みそ汁」「即席はるさめスープ」などが定番です。
粉末にお湯を注ぐだけでスープが完成するなど、調理に手間がかかりませんし、何よりすぐに飲めます。商品によっては、水でも美味しく飲めますので、あらかじめいろいろな商品を試してみてはいかがでしょうか。
間食系
お菓子などの間食系は、被災生活に気持ちのゆとりをもたらしてくれる重要な備蓄食料です。
片づけに追われて疲れたときや、ストレスが溜まったときなど、お気に入りのお菓子があるだけでも、気分は変わります。
基本的に生菓子でなければ、市販のお菓子は賞味期限が長い傾向にありますが、より防災を意識するなら、「缶詰タイプ」「個包装タイプ」などの食料がおすすめです。
嗜好品系
被災生活において、普段通りの生活に近づけることは、ストレスを軽減する行動の一つです。
普段からコーヒーを飲むことが多い場合は、インスタントなどすぐに作れて飲めるような商品を備蓄しておくといいでしょう。
また、コーヒーのほか「紅茶」「緑茶」「抹茶オレ」「ココア」など、家族の好みに合わせてチョイスしてみてください。
被災時の食生活をちょっと良くするためのポイント
被災時の食生活は健康だけではなく、精神的な部分にも影響するものです。そのため、被災時にも楽しめるような食事の工夫が必要不可欠といえるでしょう。
ここからは、被災時の食生活を良くするためのポイントを解説します。
さまざまな調味料を用意しておく
被災生活でも飽きることなく非常食を楽しむために、さまざまな調味料を用意しておきましょう。
唐辛子や塩コショウ、砂糖、顆粒だしなどは、簡単に味の変化を楽しめる調味料です。「非常食に飽きてきた」など、被災生活にありがちな問題を解消できますので、味が異なる調味料を複数備蓄しておいてください。
普段のおかずに近い非常食を選ぶ
被災生活でのストレスを軽減するためにも、普段のおかずに近い非常食を選びましょう。
普段から食べ慣れている食品を取り入れたほうが、食べ慣れていないことによる抵抗を感じにくいもの。実は非常食は、一般的な食事にありそうな「煮物系」「焼き物系」などバリエーション豊富です。
ぜひ、実際の食卓と照らし合わせながら、非常食を探してみてください。
カセットコンロ・ボンベには余裕をもたせておく
非常時には、温かい食べ物が欲しくなるといわれています。とくに、被災生活が長引くと冷たい非常食ばかりの生活になりがちなので、作り立ての温かい食品が食べたくなるようです。
そのため、被災生活で余裕があるときに調理できるよう、カセットコンロやボンベなど余裕を持って備蓄しておきましょう。
自宅避難であれば、周囲を気にせず調理しやすいため、家族のために温かい食事を作れます。
1週間の被災生活を想定し、家族の人数に合わせて必要なカセットボンベの数を考えてみてください。
まとめ
本ページでは、防災の基本として、「備蓄したい食料例」をご紹介しました。
ただ食料を備蓄するだけでは、被災生活が苦しいものとなるおそれがあります。少しでも気分が良くなるようなラインナップを意識することが大切です。
これから備蓄をしようと計画している方や、備蓄品を見直したい方は、本ページの内容を参考にしてみてください。
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1993年生まれ。栃木県在住。一児のシングルマザーライター。Web媒体・紙媒体にて、ジャンルを問わず多くのメディアで執筆。BtoB向け記事の他、ママ目線でのコラム執筆も手掛ける。専門家や起業家などへの年間インタビュー数200人を目標に、パワフルに活動中。
「やらないと」から「やってみたい」と思える防災へ。防災を楽しく学べるイベント「あそび防災プロジェクト」の発案者。防災運動会をはじめとした様々なサービスを考案。企業や自治体、商業施設での防災イベントの実施や、「世界防災フォーラム2019」「防災アイディアソン BOSAI Startups in Japan」へ登壇。「あそび防災プロジェクト」は2020年グッドデザイン賞を獲得した。