防災コラム
インタビュー

「空いていることが1秒でわかる、優しい世界を作る」株式会社バカン代表・河野剛進

JJ JJ
「空いていることが1秒でわかる、優しい世界を作る」株式会社バカン代表・河野剛進

こんにちは!あそび防災プロジェクトのライター、JJです。

 避難所やレストラン、施設のトイレ等の空き・混雑状況をリアルタイム配信するサービス「VACAN(バカン)」。このたびは、本サービスを提供している株式会社バカンの代表・河野様にインタビューを実施しました。

コロナ禍で需要も高まっているサービス「VACAN」に込められた想いSDGsに対する考え方、ご自身が考える防災の課題についてお伺いしました。

今回は、弊社代表・赤坂との対談形式でお届けしてまいります!

サービスの特徴やビジョン

まずは、サービスの特徴やビジョンについてお聞かせください。

 河野様)社名にも由来していますが、本サービスの名前日本語で「空いている」という意味をもつ”Vacant”という、英単語が由来です。その名の通り、リアルタイムでいろいろなところの空き状況を知ることができるサービスを提供しています。

 僕たちのミッションは「いま空いているか1秒でわかる、優しい世界を作る」です。それを実現するために、本サービスの運用を行っています。 

このサービスでは、レストランはもちろん、カフェ、トイレ、空港の保安検査所など、これまで確認が難しかった領域の空き状況確認できる点がポイントです。 

トイレなんかは、実際に行ってみないと空き状況が分からないもの、というのがこれまでは一般的な考え方でした。しかしこのサービスを活用すれば、行かなくてもリアルタイムでの空き状況がわかるので、今までトイレに行って行列に並んでいた時間を有効活用でき、心の余白を持てるようになります。

 サービスの詳細はこちら

 

どういう仕組みになっているのでしょうか?

河野様)センサーやカメラを活用し、リアルタイムの空き状況を把握しています。百貨店などではカメラで混雑状況を認識し、デジタルサイネージで空き状況を誰でも簡単に確認できるように表示することもあります。もちろんスマートフォンを使い、移動しながら空き状況を見ることも可能です。

 また、混雑の可視化だけでなくオンライン上で列に並べる場所もあります。どうしても混んでいる場所では、電車に乗っている間に行列に並んでしまうことで、行列に並ぶという時間を省き、その時間を別の体験に使うことができます。

 行列に並ぶはずの時間でお買い物をしたり、公園で遊んだりといった他の時間の使い方ができ、限られた時間を大切にできるような仕組みとなっています。

 

新型コロナウィルスの影響から、「3密を避けられる」という文脈で需要が高まっているように思うのですが、いかがでしょうか?

河野様)そうですね、需要はかなり高まっています。百貨店や宿泊施設のみなさは、「この状況を乗り切りたい」、「お客さんに安心してもらいたい」という意識が非常に強いですね。単純に3密を回避することに加え、利用者の体験の質を上げていくという両側面から、導入したいとのお声が増えてきています。

 また、急激に増えているのがまさに今回のテーマでもある防災に関する、自治体からのお問い合わせですね。特に避難所の空き情報確認サービスに関するものです。初めは自分たちも想定していなかったのですが、「避難所の空き状況管理に活用したい」という声を受けてサービス提供を開始しました。

 赤坂)都内では直下型地震が起こると帰宅難民が517万人出ると言われていますが、避難所の収容数は限られています。このサービスは緊急時に本当に必要不可欠なサービスになるのではないかと思います。

 河野様)ありがとうございます。そもそもどこに避難所があるのかは普段意識しないですし、急に災害が起きたとき、今いる場所からどの避難所が近いのかを判断するのは難しいですよね。常に防災マップを持ち歩いている人もそうそういないですし……

 また、他の方がどこに避難しているかわからない事で、他の方が集まっている場所集まってしまうリスクもありますよね。

 さらにコロナの影響で、避難所の収容可能人数を減らさざるを得ないという課題もあります。

収容可能人数が減らされると、九州の台風10号で起きた、避難者の受け入れ拒否やたらい回しのような問題が発生してしまいます。もちろん自治体の皆さんも努力して運営されていたのですが、ソーシャルディスタンスを考えるとどうしても今までと同じ人数の受け入れはできれないという問題があります。

VACANを利用すれば、少なくともスマホを使える人は、どの避難所が空いているかが即座にわかります。空いている避難所に人が分散するので、結果として、スマホが使えない方でもたらい回しにあう可能性が低くなっていくと考えています。遠方に住われているご家族の方が電話などをすることで、スマホを持っていない方も混雑を避けられます。

赤坂)私の知り合いも九州でボランティアを頑張っているのですが、「受け入れたいけど、受け入れられない」ジレンマに陥っていますね。ざっくりとでも混雑状況を把握できるようになれば、ロジカルな判断ができるようになりますよね。

 河野様)利用者が行く避難所を選択できるのが重要なのかなと思っています。混んでいても行かざるを得ないなら行く、という選択も考えられますし、時間に余裕があり、違う避難所行けるのであれば、そちらを選択し感染症リスクを下げる選択もできます。

もちろん最終的な受け入れ判断などは自治体が行うものだと思いますが、選択肢ができることで、そこに向かうまでのその他のリスクを減らすことが大事だと考えています。

 避難所では、受け入れ側が対応しきれないことで住民の不安が増す、といった心理的な課題もあります。VACANを利用して情報の格差を瞬時に埋めていくことで、避難所収容に関するリスクは減らせるのではないかと思っています。

 赤坂)避難所に行くべきか悩んでいて、電話をかけてもつながらない……なんて状況も、想定できます。また忙しそうな避難所には電話をかけにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません

 河野様)大量の電話が来てしまうとそこに時間や工数がとられてしまい、本来すべき仕事に手が回らくなってしまいます。そんな中で住民の安全を守るために運営をしていかないといけないという難しさが、避難所の課題となっています。

 そんな中、VACANのサービスを通して、例えばわざわざ電話しないといけないシチュエーションが5割減ったとすれば、本来時間を割くべきところに十分な時間を割けます。

また、職員間での情報のギャップが無くなれば、職員の中での工数の分散ができます。これまでは防災課の職員しかできなかったものが、他の職員にも振り分けられるようになるかもしれません。結果として住民の方が安心できるオペレーションが実現するのではないでしょうか。

赤坂)そういう意味でもとてもクリティカルな解決になりそうですね。

 河野様VACANWEBサービスなので、リンクさえあればすぐに情報がわかるんですよね。ダウンロードの手間もいらないのでどこからでもアクセスできます。

 災害が起こったときって離れた場所にいると何もできないんですよね。「大丈夫」ぐらいしか言えなくて。

スマホを使い慣れていないおじいちゃんやおばあちゃんなんかだとすぐに情報が届かないことがあるので、情報を取れる人がとって、共有する。うちではこれを「絆コール」と呼んでいます。 

御社のサイトを拝見させてもらった時に、年齢や状況による情報の偏在化を減らすという点で、も同じような考え方を感じました。

やっぱり自分たちだけだと判断が難しい、情報が届かない、という部分にアプローチし、「空いていることが1秒でわかる、優しい世界」を実現できていけたらいいなと思っています。

 赤坂)おっしゃる通りで、今の日本は、災害知識が偏っているなと感じています。防災って詳しい人はとても詳しいですが、反対にまったく知らないという人も多くいます。

防災は全国民的な話題であるはずなのに、知らない人に対するケアというか、最初の接点づくりがまだうまくいっていないような気がしています。それにはやっぱり楽しさとか、子供と一緒に遊べるとか、そういったプラスアルファの要素を満たす必要があると感じています。 

きっかけはなんでもいいので、基本的な知識だけでも、みんなが持てたらいいなと思います。例えば防災知識が50ある人の理解度を100にするより、0から1にすることの方が、大切なことだと感じています。

我々も、防災の専門家ではないからこそのアプローチで、企業やファミリー向けのレクリエーションイベントという形でやらせてもらっていて、防災に対する自然なきっかけづくりをできればと思っています。

今回のお話をお伺いしていると、共感できる部分がたくさんありますね。

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私も実際にVACANを使ってみたのですが、お店を探すついでに避難所の情報も見られるというのは、弊社で目指している「ゼロイチのきっかけづくり」という点で通ずる部分があるなと感じました。

河野様 防災って自分事化できなくなるケースが非常に多いなと感じています。

災害はあまりにも非日常的で、普段は意識しづらいですが、実際起こった時の被害は甚大です。日常と非日常の接点をなくしていくことが大切だと思います。

そういった意味で、普段見慣れているもので避難所の場所も見られたらいいなと思っていますね。

日頃から使っているサービス、例えば温泉施設や市役所の空き状況で活用して普段使っているものをいざというときに同じ操作性で見られたら、慣れている状態なので、スムーズに情報を得ることができます。日常の中に染み込ませていくことで、防災に対する価値は深まっていくのではないかと思います。

日本の防災の課題

今感じている日本の防災の課題はございますか?また、今おこなっている事業で解決できる防災の課題はどんなものですか?

 河野様繰り返しになりますが、防災は自分事化しづらく、情報を持っていない人が多い、情報のギャップが多い領域だと思っています。

 そもそも持っている情報が違うということもありますし、情報は開示されているけれど取りに行けない、探し慣れていないのでいざという時に到達できない、ということもあります。このような課題をシンプルにできたら、あるいは統合できたらいいなと思っています。

現代では、これまで想定しなかったことが起こってもおかしくないですし、未曾有の災害が発生する可能性は必ずあります。さらに、コロナという社会全体の課題も相まって、今の防災をより難しくしているのではないかと思います。

 例えば具体的な課題としては、やはり避難所の受入人数ですね。ここは本当に矛盾というか、運営の難しさを感じます。

 大切なのは、今ある避難所等の資産をいかに活用するかだと思います。そもそも数を増やすということもできなくはないですが、現実的に考えると、簡単なことではありません。

 VACAN を活用すれば空き状況を可視化でき、今ある資産を有効活用することができます。

情報のギャップを埋めて、利用者自身が合理的な選択肢をとることにより、少しでもこの問題を分散していきたいです。そうすることで、課題解決の可能性が見えてくるのではないかと思っています。

これから行っていきたいこと

これからやりたいことやチャレンジしたいことはありますか?

河野様)このサービスを、日本全体で広げていきたいと思います。

 インタビューの冒頭でVACANのシステムにセンサーやカメラ等のシステムを使っているとお話ししましたが、避難所のサービスでは、AIやセンサーの技術を使っていないんです。というのも、災害時は電源が使えなくなる可能性がありますし、カメラを使うにしても、地震が起こるとうまくコントロールができなくなるためです。

 一方、スマートフォンやパソコンなど、蓄電することによって生きているデバイスがあれば、適切な情報発信を電源に頼らずできます。

 VACANは、導入のハードルがとにかく低く、機器設置も不要なので、簡単に広められるサービスだと思っています。

僕たちはこの自治体向けのサービスについては、基本的に無償で提供しています。本当に多くの人に使って欲しいですし、自分たちの家族がこういったサービスがなくて苦しむというのも嫌なので、とにかく多くの自治体に広めていきたいと思っています。 

そして、サービスって導入して終わりではありません。大事なのは「構築」でも「導入」でもなく「運用」なんです。いかに多くの方に認知いただき、使えるような状態を作っていくかも、今取り組むべきことだと感じています。

 特に防災というのは日常に食い込んでいないものなので、意識の外になりやすい、自分事化しづらいといった面があります。僕たちが、日常に食い込むようなサービスとしてVACANを普及できれば、非日常の時でもいつもと同じように使える、教育された状態を作れると思っています。 

自治体への普及と、利用者数の拡大。防災を日常に溶け込ませるために、この両輪でやっていきたいと思っています。

SDGsについて

ところで、御社はSDGsに関する取材を受けていたりと、積極的にSDGsに取り組まれている印象を受けるのですが、SDGsについてはどうお考えですか?

河野様)「SDGs(持続可能な開発目標)」にもいろいろな考え方がありますよね。

 例えばトイレの空き状況がわかるというのもある意味、ハンディキャップの方たちへの情報提供ができる、という観点でSDGsに入るのかなと思います。

 また、「住み続ける街」という観点に対しても、安心・安全に過ごせるかどうかってとても重要だと思っていて。僕たちが自治体と組んでサービスを提供することで、安心・安全な暮らしを実現してくことが、SDGsにつながると思っています。

 (赤坂)SDGsというワードが大きすぎて、「これがSDGsのサービスです」と一言で言えるものってなかなかないですよね。

河野様)まさにそうですよね。

 他の点でいくと、健康面の話もある意味近いのかなと思っています。このサービスをしっかり広げていくことでコロナとも向きあえるのかなと感じています。

また、健康っていうのは人の心の話でもありますよね。コロナ禍で何が苦しいって、飲食店をはじめ、事業が運営できなくなる人がたくさん出ていることです。その人たちの心はどんどん蝕まれていっているので、リスクと経済のバランスはすごく大事なテーマだと思います。

「働き続けられる街」という観点からも、同様に当てはまります。僕たちが大事にしている価値SDGsの項目に当てはまったという感覚が近いのかなと思います。

僕たちのサービスを導入することで、利用者に対してはリスクの目を与えることで健康を守れますし、事業者からすると、安心して働ける環境づくりに繋がっていきます。

SDGsねらっていくというよりは、価値を提供し続けた結果としてSDGsを達成していく、サービスを通して貢献していくという流れが自然なんじゃないかなと思います。 

赤坂)そうですね。現在、周りを見てみても、SDGsに取り組もうとしている企業は多いです。ただ、戦略はあるけど、じゃあ何をするのか、なるとイマイチ決まらず、矛盾のようなものを感じることが多いですね。本質的じゃないところが多いというか。

河野様)同感です。僕たちとしてはSDGsを目指しているというよりは、社会課題を解決できればと思っていて。時間を大切にしたい、優しい世界を作りたい、という思いを分解していくとSDGsの項目に合致する部分があるのかなと感じています。取材などに取り上げてもらったのも、そういう文脈から来ているものだと思います。

最初からSDGsをやる会社だとは思っていなかったのですが、そういった側面で捉えていただくケースが増えてきていますね。 

赤坂SDGsやるぞ!」というよりも、持っている強みを活用して社会課題に向かったサービスを提供していく方が、実態として社会の役に立てますよね。

河野様SDGsは、アウトプットから逆算して考える方がわかりやすいかなと思っていて。自分たちのやっていることが社会にどういう効果をもたらすかという観点で見たときにSDGsの分類の中に当てはまれば、貢献できていということではないかと思います。

結果としてSDGsに該当していれば、「やっていることは間違っていなかった」と解釈できるのではないでしょうか。

河野様にとって防災とは?

では最後に、河野様にとって、「防災」とは何でしょうか?

河野様)安心して生活を送るために、必要不可欠なもの。優しい世界を作るためには避けて通れないものだと思っています。 

災害はいつ来るか分からないので、防ぎようがないです。ただ、そのための準備はできます。防災の情報における非対称性を埋めること。職員が安心して対応を、住民が安心して生活をできるためのサービスを提供していくこと。それが、僕たちがやるべき、できることだと思います。

まとめ

今回のインタビューを通して感じたのは、強みを生かして社会課題に立ち向かうことの大切さでした。

VACANIKUSAのあそび防災プロジェクトも、元をたどれば防災ではないところからスタートした事業です。

でも、だからこそ、「防災の情報ギャップをなくす」といった社会課題に対し、より日常に近い部分からアプローチできるのではないかと感じました。 

河野様、貴重なお話をありがとうございました!

JJ
この記事を書いた人
JJ

株式会社IKUSAのオウンドメディア担当。「あそび防災プロジェクト」をはじめとするメディアの編集長を務めています。記事の編集、校正、アナリティクス分析、駆け出し動画編集、WEBデザイン、メルマガ企画など遊びの会社の1人マーケターとして奔走中!

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