地域における防災活動は、市民の安全を守るうえでも必要不可欠な取り組みです。
日ごろの活動が市民や身の回りの人々を助けるといっても過言ではないので、必要な知識を身につけたり、実際に体験してみたりするなど、積極的にイベントなどで取り入れていくことが大切です。
とはいえ、防災の取り組み経験が浅かったり、これから取り組みをスタートさせたりする場合、「そもそも何をしたらいいのか……」「どんな取り組みが効果的?」など、さまざまな悩みを抱えることでしょう。
そこで今回は、地域の防災取り組み事例について詳しく紹介します。ぜひ今後の取り組みのヒントにしてみてください。
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地域の安全は「防災への取り組み」で守る
地域の安全は、防災への取り組みで守ることが大切です。
近年重視されてきている自助・共助の問題。自分の身を自分で守ると同時に、お互いに助け合えるような地域づくりが求められていることから、地域ぐるみでの取り組みが必要不可欠です。
市町村が率先して防災イベントを実施したり、地域の組織や団体を中心に自発的に取り組みを始めたりするなど、最近はさまざまな動きが見られるようになってきました。ただ、そのような傾向はあるものの「十分な防災」という点では、まだまだ課題が見られるのも事実です。
地域によっては「そもそも具体的な取り組みを計画していない」というケースも。いつ発生してもおかしくない大災害から地域を守るためにも、これを機に前向きに防災への取り組みを検討したいものです。
地域における防災の取り組み事例まとめ
「具体的にどのような取り組みを実施すればいいのかわからない」と頭を抱える担当者の方も少なくないでしょう。
ここからは、地域における防災の取り組み事例について詳しくご紹介します。
オンライン防災イベント
コロナ禍において、安心して実施できる防災の取り組みとしても期待できるのが「オンライン防災イベント」です。
株式会社IKUSAでは、2020年12月に兵庫県西宮市のオンライン防災イベントを開催。ファミリー世帯を中心に、多くの参加者にイベントを楽しんでもらうことができました。
オンラインで防災を学ぼう!西宮市「おうち防災運動会」開催レポート
具体的なイベント内容は、リモート環境で楽しむ「おうち防災運動会」です。防災×運動会がコンセプトのアクティビティで、おうちの中で完結するプログラムが特徴。新型コロナウイルスの感染リスクを回避しつつ、防災について学びながら、体を動かして楽しむことができます。
防災の間違い探しや非常食探索、防災をテーマにした借り物競争など、おうち防災運動会ならではのプログラム設計が魅力です。
消火活動体験
あらゆる災害で発生する可能性のある火災。いつか消火活動が必要となるシーンに遭遇することもあるかもしれません。
しかし実際のところ、「大人になった今でも一度も消火器を使用したことがない」という方は少なくありません。消火器は初めての方でも使用できるよう、使用方法は難しくなく、きちんと説明書きもあるなど配慮されています。しかし一度でも使ったことがある人と一度も使ったことがない人では、現場での対応の早さに差が出てしまう可能性があります。
そのため、地域の防災の取り組みとして消火活動体験を行うのも一つの方法です。大人は実際に消火器を使用して消火活動を体験し、子どもは水鉄砲などで楽しく消火体験。年齢層などで分けながら、本格的に体験できるような取り組みがいいでしょう。
防災トランプで自助共助の体験
防災トランプは、ゲーム感覚で防災のことを学べるカードゲームです。
ルールは、ババ抜きやポーカー、193、大富豪など、誰もが知るトランプゲームと同じ。しかし、特別ルールとして一定の条件を満たすと、ボーナスがもらえるというユニークなゲームスタイルとなっています。
具体的には、「特定のタイミングで防災について話すとボーナスゲット」など、ボーナスをゲットできるとゲームを有利に進められるような仕組みです。
防災に関する話題は、自然災害の被害や対策、危険なケースなどさまざまです。タイミングはゲームによって異なるものの、ババ抜きであれば「捨て札の中にリスクマークがあったら」、神経衰弱であれば「ペアになったカードにリスクマークがあるとき」などが挙げられます。
子どもでもわかりやすいゲームであるだけでなく、直感的に遊べることから、地域の防災の取り組みとしておすすめです。
防災ワークショップの開催
「防災ワークショップ」は、イベント感覚で楽しめるだけでなく、本格的に防災を学べるのが魅力です。
ワークショップの内容は企画ごとに異なりますが、主に避難のことや非常食のこと、災害が発生した直後の行動などを取り入れることが多い傾向にあります。
「どんな行動が正しいのか」は、頭で理解しているだけでなく、実際に体で実感することも大切。実際に動いて感覚で理解できれば、より深く理解しやすくなるものです。
また、子ども向けにはクラフト系のワークショップもおすすめ。新聞紙を活用した防災スリッパの作成など、実際に災害現場で活用できるようなアイテムを手作りできれば、いざというときに役立つこと間違いなしです。
ハンドブックの作成・配布
最低限取り入れたい防災の取り組みとして、地域向けのハンドブックの作成・配布が挙げられます。
自然災害は、地域によって被害の大きさや想定されるリスクが大きく異なります。例えば、山付近の地域であれば土砂崩れのリスクがありますし、河川の近くであれば洪水や浸水のリスクがあるでしょう。当然、海沿いでは津波も想定されます。
そのため、地域の特性に合わせたオリジナルのハンドブックを作成・配布する必要があります。想定される被害を明確に記し、「どんなときに・どんな行動をすればいいのか」「どのようなタイミングでどこへ避難すればいいのか」など、判断しやすいようにガイド要素も盛り込んだハンドブックがおすすめです。
ハンドブックでは、テキストだけでなくイラストや写真なども積極的に活用しましょう。イラストや写真があると、直感的に理解したりイメージしたりしやすくなります。子どもでも理解しやすくなるのもメリットです。
セーフティネットワークの構築
セーフティネットワークの構築は、システム関連の内容ではなく「人と人との繋がり」に重きを置いたネットワークの構築です。
ここまでで触れた通り、防災において必要なのは自助と共助。共助を実現するためには、日ごろから地域内での交流が必要不可欠です。その一環として、セーフティネットワークの構築を目指した事例が挙がっているのです。
具体的には、地域の防災団体が中心となってコミュニケーションの活性化を実現することです。日ごろの挨拶をはじめ、協力員体制の導入などご近所づきあいを深める機会を作り出していきたいもの。
近年、近隣住民同士のコミュニケーションが希薄化する傾向にあります。しかし防災においては、コミュニケーション不足は深刻な問題だといえます。
今一度、地域内のコミュニケーションについて見直しを図りましょう。
情報伝達シミュレーション訓練
情報伝達シミュレーション訓練は、災害における情報の収集や伝達のための訓練です。
災害が発生した場合、真っ先に行うべきは身を守る行動ですが、忘れてはいけないのが情報収集です。
地域の防災活動の中心である団体は、日ごろから万が一に備えて情報の伝達方法を模索し、シミュレーションとして訓練を重ねなければなりません。実際、大災害時は停電や電子機器の故障など、あらゆる問題が発生し、情報伝達がスムーズにできない場合があります。
情報伝達シミュレーション訓練を行うことで、「どのように情報を発信するか」「地域住民への情報伝達はどうするか」などを見出していきます。
避難訓練
避難訓練は、重要度が高い防災活動の定番です。
学生時代に避難訓練を経験したことがある方は多いかと思いますが、大人になると避難訓練の機会はめっきり減ってしまいます。
いざ災害が発生すると、現場でパニックになってしまう人も少なくありません。災害現場でスムーズに避難をするには、やはり日ごろの避難訓練が重要なのです。
いざというときの逃げ遅れを防ぐためにも、定期的に避難訓練を実施したいものです。
給食・給水訓練
給食・給水訓練は、共助としての取り組みの一つです。
災害が発生すると物流がストップし、近隣のお店からは物資がなくなってしまうことがほとんど。そんなときこそ、地域一丸となって給食や給水活動を行う必要があります。
給食に必要な道具の揃え方から、備蓄品の場所の確認に至るまで、意外にも訓練を通さないとわからないことは多いものです。
共助を実現して災害を乗り越えるためにも、給食や給水訓練を視野に入れた取り組みを検討してみてください。
救出・救助訓練
大人向けの防災の取り組みとして、比較的多い事例が救出・救助訓練です。
大きな災害が発生すると、負傷者も多く発生します。けがをすると逃げ遅れてしまいかねないため、お互いに助け合いながら命を守る行動をすることが大切です。
とはいえ、「他人を助ける」という場面は、医療に携わっていなければなかなか遭遇しないでしょう。負傷者を目の前にしても、何をすればいいのか混乱する人は少なくありません。
救出・救助訓練を実施すれば、いざ遭遇しても落ち着いて対処できるようになることが期待できるでしょう。
地域の防災の取り組みを考えるコツ
地域の防災の取り組みを計画する場合、どのようなポイントに沿って考えていけばいいのでしょうか。ここからは、取り組みを考える上でのコツをご紹介します。
幅広い世帯が参加しやすい内容にする
防災は年齢や性別、家族構成を問わず、すべての住民に深刻なリスクがある事柄です。だからこそ、ファミリー世帯から単身者、大家族世帯など、あらゆる世帯が参加できるような内容にする必要があります。
シンプルな取り組み内容であることはもちろんのこと、直感で理解しやすいルールにするなど、さまざまな配慮が必要です。
わかりやすさを重視して計画を立てる
防災に関する取り組みを計画する際には、わかりやすさを重視して考えていくことが大切です。
せっかく参加しても「結局何が大切なのかわからない」「参加したものの何をすればいいの?」など、機会を無駄にしてしまうケースは実際に存在します。
こうなってしまうのは主催者側の問題であることも多いため、参加者全員が理解できるような企画・計画を目指す必要があるのです。
1回の活動に内容を盛り込みすぎるのではなく、「共助」「避難訓練」など、各回でテーマを決めて実施するといいでしょう。
実際に体験できる取り組みを選ぶ
ただ説明を聞いて防災を学んでいくスタイルではなく、実際に体を動かして体験する形にすることで、現場での立ち回りをイメージしやすくなるだけでなく、「初めての大災害」にも対応しやすくなります。
とくに、避難や救助、給食・給水などは、体験を通して学べる要素が多いもの。体験できる取り組みを中心に計画を立てていきましょう。
現場に役立つ内容を取り入れる
地域の防災の取り組みでは、現場に役立つ内容を取り入れることが大前提です。
例えば「なぜ地震が発生するのか」といったメカニズムも大切ですが、現場ではメカニズムの知識はあまり役に立たないのが現状。「どう逃げるべきか」「いざという場面ではどんな行動をすべきか」といった実践的な内容のほうが、現場で役に立ちます。
そのため、防災の取り組みを計画する際には、「現場で役立つか否か」を重視してプログラムを設計していくようにしましょう。
まとめ
地域における防災への取り組みは、地域を守るためにも必要不可欠です。
自然災害での被災は、決して他人事ではありません。自然災害が多い日本に住んでいる限り、誰の身にも降りかかる可能性があるといえます。だからこそ、地域一丸となって自助・共助を目指していかなければなりません。
ぜひこの記事でご紹介した事例も参考に、防災への取り組みを今一度考えてみてはいかがでしょうか。

1993年生まれ。栃木県在住。一児のシングルマザーライター。Web媒体・紙媒体にて、ジャンルを問わず多くのメディアで執筆。BtoB向け記事の他、ママ目線でのコラム執筆も手掛ける。専門家や起業家などへの年間インタビュー数200人を目標に、パワフルに活動中。

「やらないと」から「やってみたい」と思える防災へ。防災を楽しく学べるイベント「あそび防災プロジェクト」の発案者。防災運動会をはじめとした様々なサービスを考案。企業や自治体、商業施設での防災イベントの実施や、「世界防災フォーラム2019」「防災アイディアソン BOSAI Startups in Japan」へ登壇。「あそび防災プロジェクト」は2020年グッドデザイン賞を獲得した。