3.11東日本大震災をはじめ、島国である日本では地震、台風などの何らかの災害に見舞われることが少なくはありません。最近では、首都圏直下型地震や南海トラフ地震などの大災害も予想され、防災に対する人々の意識も高まっています。
それと同時に、防災教育や防災対策へ取り組む企業も増加傾向にあります。企業には従業員の安全を守る法的責任があり、事業所内の防災整備はもちろんのこと、従業員への防災教育にも力を入れる必要があります。
そこで今回は、企業の防災担当者様へ向けて、防災教育に使えるゲームやワークショップを紹介します。また、いくつかの企業による従業員への防災教育事例も記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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なぜ企業において防災教育が必要なのか
なぜ今、企業では従業員へ向けた防災教育が必要なのでしょうか?
日本国内はさまざまな災害が起こりえる
私たちの住む日本では、地震や火災、土砂災害、水害、噴火災害など、さまざまな災害に見舞われる可能性があることはご存知かと思います。特に日本は島国であることからも、地震による災害は避けては通れない国です。
1995年1月に兵庫県で起こった「阪神・淡路大震災」、2011年3月に東日本で起こった「3.11大震災」をはじめ、日本は今後も「首都圏直下型地震」「南海トラフ地震」などの歴史上でも大規模な地震が予測されています。地震をはじめとしたさまざまな災害対策へ向けて、企業の防災教育や研修は必須といえるでしょう。
従業員の安全を守る法的責任がある
企業には、従業員や顧客の生命の安全を第一に考えなければならない法的責任や、地域社会の一員として企業活動をできるだけ維持して災害の復旧・復興に貢献する責任があります。
企業が従業員の安全を守る法的責任としては、労働契約法第5条に定められている「安全配慮義務」があり、下記のように条文に記載されています。
【使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。】
安全配慮義務を怠ったことで労働者に損害が生じた場合は、安全配慮義務違反となります。また、過去には安全配慮義務違反によって損害賠償が発生した判例もあり、災害時における事業継続に加え、従業員を守るためにも企業の防災教育や防災対策は必須となっています。
新入社員等に対する防火・防災教育の推進
企業の防災教育は、新入社員の研修としても有効活用できます。
入社間もない新入社員は、自社オフィスのある建物内の構造や様子がわからないために、避難器具や消化器などの消防用設備の位置や使用方法、災害避難経路や非常階段などの位置情報を十分に把握できていません。
新入社員へ防災教育を実施することで、建物の規模や構造などの把握、避難経路の確認、災害時に自身を守る対処法などを学び、万が一の災害に備えることができます。
企業で効果的な防災教育を実施する方法
企業で効果的な防災教育を実施するためには、どのような方法があるのでしょうか?
防災関連のゲーム・ワークショップ
最近では、人々の防災意識を高めるために、楽しみながら防災についての理解を深められるゲームやワークショップが続々と開発されています。
防災と聞くと難しいイメージがありますが、ゲーム(カードゲームやボードゲーム)やワークショップを活用することで、誰でも気軽に防災知識を学ぶことができます。
中でもワークショップは複数人のチームで進めていくものもあり、従業員同士のコミュニケーション向上やチームビルディング構築にも効果的です。
防災関連のセミナー・講義
防災教育事業を手掛ける企業では、防災の専門家を招いたセミナーや講義を実施しています。そのような防災関連のセミナー・講義を従業員の研修時間に開催することで、防災の知識を深めることができます。
防災関連の資格取得や検定の受講
防災に関連する資格や検定は、国家資格・民間資格のどちらも存在します。従業員がそれらの資格取得や検定の受講をすることで、防災の知識を身に付けられます。また、企業の防災担当者が防災関連の資格を取得することで、実務としての防災知識を活かすことにもつながるでしょう。
企業の防災教育で使えるゲーム・ワークショップを紹介
企業の防災教育で使えるゲームやワークショップにはさまざまな種類があり、どれを選べばいいか迷ってしまうこともあります。ここでは、特におすすめの防災教育で使えるゲーム・ワークショップを厳選して6つ紹介します。
クロスロードゲーム
クロスロードゲームは、阪神・淡路大震災で実際に災害対応にあたった神戸市職員へのインタビューをもとに作成されたカードゲームです。 カードには、「3000人いる避難所で、2000食を確保した。この食糧を配るか配らないか」のような“災害時のジレンマ”が二者択一の質問として書かれ、参加者はYes・Noで答えます。
グループ内の回答で多数派は青座布団が、同じ回答が1人の場合には金座布団が渡され、最終的に1番多くの座布団を手にした人が勝利となります。クロスロードゲームでは、災害時における他者との価値観の違いを気付くことで、災害時にどのような選択をすればいいのかを考える力を身に付けられます。
シャッフル
防災の知識を遊びながら学べるカードゲームがシャッフルです。カードには「災害用伝言ダイヤルのかけ方」「ガスメーカーの復帰方法」などの防災知識に関するイラストが描かれ、正しい手順に並び替えることでポイントがもらえます。カードのジャンルは計12 種類もあり、さまざまな防災の知識や技術を学べます。
災害図上訓練「DIG」
災害図上訓練「DIG(Disaster,Imagination,Game)」は、参加者が住んでいる地域や職場の地図上に書き込みをし、それらに潜む災害の危険性を“可視化”する防災訓練です。「実際に災害が起きたときにどうしたらいいか」を具体的に考えられ、リアリティの高い防災教育として活用できます。
避難所HUG
避難所HUG(Hinanzyo Unei Game)は、避難所運営を考える1つのアプローチとして、静岡県が開発したゲームです。年齢や性別の異なる避難者それぞれが抱える事情が記載されたカードを使い、適切な避難所設備の設置や、避難所で起こる問題の対処法について検討します。災害時の避難所設置に必要な視点や考え方を学べるのが、避難所HUGの大きな特徴です。
防災運動会
防災運動会は、運動会に防災の要素を取り入れた防災アクティビティです。災害時における5つのフェーズ「事前・災害発生・発災直後・避難生活・生活再建」それぞれに応じた運動会の競技を体験し、楽しみながらも防災についての知識を深められます。
社員研修や防災教育などのさまざまな場面で活用でき、社内のチームビルディング構築やチームワーク向上の機会としても効果的ですよ。 防災運動会の資料ダウンロードはこちら防災運動会のお問い合わせはこちら
おうち防災運動会
おうち防災運動会は、オンライン上で防災を体験できる新しい防災運動会です。オンラインならではの特徴を活かしたさまざまな競技を通じて、社内のチームやご家族と一緒に防災知識を学べます。おうち防災運動会の資料ダウンロードはこちらおうち防災運動会のお問い合わせはこちら
防災謎解き脱出ゲーム
防災謎解き脱出ゲームは、謎を解きながら防災に役立つ知識を学べるゲームです。4~6人が1つのチームとして全ての謎を解き進め、脱出を目指します。
防災に関する謎を解くことで、防災に対する基本的な知識や心構えを身につけることができます。また、体験を通して学びを得られるため、主体的に学習することができ、学びが深く定着します。
ゲームを進めていく過程で、チーム内での協力や役割分担が促進されるため、コミュニケーションの活性化やチームビルディングにも有用です。
防災謎解き脱出ゲームはオンラインでも実施が可能です。
防災謎解きONLINEでは、オンラインで謎を解きながら、災害発生時に必要な考え方や知識を学ぶことができます。
株式会社IKUSAが独自開発した「リモ謎システム」によって、各チームの進捗状況を正確に把握できるため、オンラインであってもスタッフが的確にフォローに回ります。
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防災コンセンサスゲーム
防災コンセンサスゲームは、コンセンサス(合意形成)を得る要点を学べるコンセンサスゲームと防災を組み合わせたアクティビティです。
災害が発生して帰宅困難になった状況における最適な対処について、チームで議論して答えを導き出します。
防災に役立つ知識を得られるのはもちろんのこと、メンバーの防災に対する考え方や価値観の違いを知ることができます。
また、多数決は用いずに話し合いを通じて全員が納得できる答えを考えることで、コミュニケーションや役割分担が促され、チームビルディングを実感することができます。
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防災教育と合わせて導入すべき企業の防災対策
ゲームやワークショップ以外の、従業員の防災教育として効果的な防災対策について紹介します。
防災マニュアルの策定
防災マニュアルとは、災害発生時の対応を定めたマニュアルです。防災マニュアルを策定後、マニュアルを元にした防災訓練を通して、マニュアルの内容を従業員に浸透させることが効果的です。万が一の災害が起きても、防災マニュアルの内容を浸透させておくことで、従業員が適切な行動を取ることにつながります。
安否確認サービスの利用
災害時における従業員への早期の安全確認や事業の迅速的な復旧を目的として、安否確認サービスの導入が効果的です。安否確認は電話やメールだけで十分と思われがちですが、東日本大震災では電話回線が輻輳(ふくそう)状態に陥ったことで一時的に電話・メールが利用できない状況となりました。
最近では、法人向けのSNSや安否確認サービスなどもあるので、電話やメール以外の安否確認手段を用意しておくといいでしょう。
ハザードマップの確認
ハザードマップとは、災害時の被害状況や範囲を予測し、安全な避難場所や避難ルートをあらかじめ記載した地図のこと。地震や洪水など災害別に用意され、それらは国土交通省や自治体で確認することができます。
インターネットやSNSを活用した防災情報の収集
ニュースやテレビよりも早く、リアルタイムの情報を得られるインターネットやSNS上からの情報収集も欠かせません。特に災害時のニュースやテレビでは、比較的災害の規模が大きい場所や人口の集中する主要エリアの報道に偏ってしまいます。情報収集にインターネットやSNSを活用することで、自分が今いるエリアの細かい情報を知ることができます。
その一方で、インターネットやSNSの情報はデマ情報が混じってしまうことからも、信頼性に欠ける場合も少なくありません。インターネットやSNSから情報を得る場合には、行政や公的機関などの信頼できる機関のサイトやアカウントを参考にしましょう。
企業が防災教育に取り組む事例
次は、実際に企業が防災教育に取り組んだ事例についてそれぞれ紹介します。
大規模災害対応模擬訓練│プルデンシャル生命保険株式会社
プルデンシャル生命保険株式会社は2011年11月より、社内の災害対策本部要員や管理職向けに大規模災害対応模擬訓練を実施しています。この模擬訓練は、事前に参加者に訓練の内容を伝えない「シナリオ非提示型」の訓練であり、社内整備や防災ツール類を活用しながら危機対応能力の向上や当事者意識の向上を目的としています。
オリジナルの災害図上訓練「DIG
介護施設等を運営する洛和会ヘルスケアシステムでは、災害図上訓練「DIG」をより簡単で短時間に、楽しく実施できるように改良を加えた「RC-DIG(洛和ケア DIG)」を活用した防災訓練を実施しています。
RC-DIGでは、ファシリテーターと職員の一対一の問答形式を採用しています。訓練中に瞬時に判断した行動を繰り返し職員に発言してもらうことで、職員が「対応行動の根拠と原則」を学習することができるように工夫されています。
また、職員の発言やファシリテーターの説明を通じて、他の職員も「自分以外の動き」を把握でき、災害時の判断力が養成されています。
災害ボランティアへの参加機会の提供│武田薬品工業株式会社
武田薬品工業株式会社では、東日本大震災をきっかけに、2011年4月から特別有給休暇の付与とボランティア保険料の会社負担を行っています。また、グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークが主催する「GC-JN東日本大震災復興支援コレクティブアクション」との連携を図ることで、従業員がボランティア活動を行いやすい環境を整えています。
他にも、社内イントラネットに「タケダ東日本大震災サイト」を立ち上げ、ボランティア活動などに関する情報を発信し、従業員のボランティア活動に役立てています。
まとめ
さまざまな災害に見舞われる可能性の高い日本において、従業員の安全を守るための防災教育は必須といえるでしょう。今回紹介した防災関連のゲーム・ワークショップや、他の企業による防災教育事例を参考に、従業員の防災教育に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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