さまざまな防災対策が増えていますが、そのうちのひとつに「グループワーク」があります。
グループワークは、一般的に知られている「防災訓練」とは異なり、参加者同士でのコミュニケーションを重視した防災対策です。意見交換をしたり、提案し合ったりと、参加者の目線で話し合いが行えることから、防災対策の一環として、学校や企業、地域のイベントなどで実施されています。
しかし、防災グループワークの実態については、まだまだ理解が追い付いていない状況です。
そこで、今回は防災対策に取り入れるべき「グループワーク」の概要や方法、注意点に至るまで幅広く解説します。
学校や企業の担当者などは、ぜひ防災対策のヒントとして本記事をチェックしてみてください。
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防災グループワークとは
防災グループワークとは、冒頭でも触れたとおり参加者同士でのコミュニケーションに重きを置いた防災対策です。
主に「防災」に関わる話し合いを行うことが目的であり、参加者それぞれの意見を発表し合う、特定の課題を改善するための策を話し合うなど、グループワークならではの魅力があります。
一般的な防災対策は、担当者が提示した取り組みに沿って実施することが多いですが、防災グループワークは一人一人が防災について深く考えます。単純に指示されて動くだけというわけではなく、自ら考えて意見を持つことができるのです。
防災グループワークの参加者人数に明確な定義はありませんが、数十人規模で実施することもあれば、数人ごとにグループを作ってディスカッションする事例もあります。
いずれにせよ、防災グループワークは自ら考え、行動を起こすためのヒントになるでしょう。
防災グループワークの方法
防災グループワークを実施するにあたり、疑問となるのが「そもそもどのように計画すればいいのか」「何を話せばいいのか」という点ではないでしょうか。
ここからは、防災グループワークの方法について、具体的に解説します。防災グループワークが初めての場合は、以下の方法を参考にしてみてください。
実体験について話す
防災グループワークでは、まず実体験について話してみましょう。
過去の災害を思い返し、「どのような事態になったのか」「日ごろから備えはしていたのか」「備えていたことで助かったことは何か」などを詳しく話していきます。
実体験は今後の教訓になるものが多く、防災対策として魅力的です。ただし、1点注意すべきポイントがあります。それが「相手に対して深く聞きすぎないこと」です。
人によっては、辛い災害体験をした方もいるでしょう。話しにくいことを抱えている可能性も考えられます。周りの参加者が深く質問していくと、不快な思いをすることがありますので、「深く詮索しないこと」を前提に進めていくことが大切です。
また、自分が話す側になったときには、「怖かった」「大変だった」といった抽象的な説明ではなく、なるべく具体性を持って説明しましょう。当時の状況が分かるような説明は、聞いている方がイメージしやすくなりますので、心がけてみてください。
必要な防災対策について話し合う
防災グループワークでは、必要な防災対策について話し合うことが定番です。
まずは、お互いに「必要」と想定される防災対策を挙げていき、その後に「これも必要なのでは?」「それは不要なのでは?」といった意見交換をします。
単純に必要な防災対策を列挙するのではなく、話し合うことで、より必要性の高い防災対策を明確にできるのです。
また、ただ「必要な対策」として指示されるだけではなく、話し合いの場で自らの頭を使い、能動的に情報を得たほうが記憶に残りやすいといったメリットもあります。
とはいえ、テーマが広すぎると、誰もが知っている当たり障りのない情報ばかりが飛び交ってしまうことも。せっかくのグループワークを有意義にするためにも、「水害に必要な防災対策」「地震に必要な防災対策など、災害のテーマを決めて話し合ってみてはいかがでしょうか。
地域で想定される災害や被害規模を共有する
地域で想定される災害や被害規模を共有することは、防災グループワークで重要です。
想定される災害や被害規模は地域によって大きく異なるのが現状。そのため、メディアなどで見かけるような想定災害が近隣でも起きるとは限りません。そのため、同じ会社で働く従業員同士や、近隣住民同士など、同じエリアに集まる方同士で想定災害や被害規模を共有することが大切です。
「過去にはどれくらいの規模の災害があったのか」「どのような災害が頻発していたのか」などをきちんと共有し合い、改めて防災対策の必要性の認識を促しましょう。
ゲーム感覚で防災知識を学ぶ
現在では、防災を楽しく学べるカードゲームや謎解きゲームなどが世に多く出ていますので、そちらを活用したグループワークを行ってみるのも良いでしょう。
例えば、「防災謎解き」は、仲間と協力して謎解きをしながら防災知識を身につけられるグループワークとなっています。人気の「謎解き」と「防災」を組み合わせた、取り組みやすいワークなので、「防災」に苦手意識を持つ人でも、主体的に参加することができます。またオンラインでの実施も可能です。
防災謎解きの詳細はこちらの記事をご覧ください。
防災で謎解きゲーム?楽しみながら知識・意識を向上しよう
防災グループワークの注意点
防災グループワークを実施するにあたり、いくつか注意点があります。
ここからは、防災グループワークで気をつけることを解説します。
ゴールを明確にする
防災に限らずグループワーク全般に言えることですが、「ゴールを明確にすること」は非常に重要です。
ゴールが明確になっていなければ、議論の方向性が定まりませんし、そのグループワークが成功であったのか否かが分かりません。
防災グループワークでは、「結論が出ることをゴールとするのか」「さまざまな情報に触れることをゴールとするのか」など、明確なゴールを設定しましょう。
体験談を話す人に対して踏み込みすぎた質問は避ける
本記事でも少し触れましたが、防災グループワークで実体験を話し合う際には、「踏み込みすぎた質問」を避けることが大切です。
他人の災害体験に耳を傾けていると、「その後どうなったの?」「今はどうしているの?」など、ついつい気になってしまうことが多いでしょう。しかし、体験談を話す方の中には、災害でとても大変な思いをしたケースもあるでしょう。内容によっては「これ以上聞かれたくない」というものもあります。
そもそも、災害体験は決して良いことではありません。むしろ「大変だった」「辛かった」といった経験が多いことですから、相手に配慮した話の引き出し方が重要です。
防災グループワークでは、無意識に相手を傷つけてしまうことも考えられますので、踏み込んだ質問は避けることをルールとしましょう。
必要に応じて過去の災害についての情報をまとめておく
防災グループワークでは、過去の災害に関する情報をまとめておくと便利です。
いざグループワークを始めてみても、なかなかディスカッションがスムーズにいかないことや、意見が出てこないことがあります。また、世間一般で知られているようなありきたりな情報しか挙がらないこともあるでしょう。
そんなときに、過去の災害情報があればより専門的な話し合いへと進めやすくなります。過去の災害情報をもとに必要なもの、必要なこと、今やっておくべきこと、リスクなど多岐に渡るディスカッションをしやすくなるのです。
防災グループワークを検討しているなら、あらかじめ過去の災害情報をリサーチしてみてください。
まとめ
防災グループワークは、防災対策に必要な取り組みのひとつです。自分の考えだけではなく、他人の意見にも耳を傾けることで、防災対策に向ける視野が広がりやすくなるでしょう。
災害のリスクが高い日本で過ごす以上、地震や水害などとは切っても切れない関係です。防災対策の一環として、ぜひ防災グループワークの実施を検討してみてください。
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1993年生まれ。栃木県在住。一児のシングルマザーライター。Web媒体・紙媒体にて、ジャンルを問わず多くのメディアで執筆。BtoB向け記事の他、ママ目線でのコラム執筆も手掛ける。専門家や起業家などへの年間インタビュー数200人を目標に、パワフルに活動中。