地震などの震災に備えて用意しておきたい「非常用持ち出し袋」。しかし「中身には何を入れたらいいの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、非常用持ち出し袋について、最低限入れておきたいグッズ、備えておくと便利なグッズをリストで紹介しています。非常持ち出し袋の準備のポイントから、幼い子供・女性・高齢者別に必要なグッズまで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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非常用持ち出し袋とは?
非常用持ち出し袋とは、災害発生時やその前に避難のために自宅を離れる際、救援物資がなくても過ごせるように準備するものです。中身は、救援物資が届くまでの間に必要な最低限の食料品、日用品をはじめとする防災用品であり、非常時にいつでも持ち出せるようにリュックなどに入れ、すぐに持ち出せる場所に備えておきます。
避難所などへの避難後もライフラインやインフラの復旧までに時間を要することが想定されているため、非常持ち出し袋には、貴重品だけでなく3日分の生活に必要なものを備えておくことが推奨されています。
出典:特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)‐内閣府防災情報のページ : 防災情報のページ – 内閣府
「常用持ち出し袋」との違い
常用持ち出し袋は「外出中に被災する可能性」に備えて、常に携帯する防災グッズです。非常用持ち出し袋は自宅に備えておくものに対し、常用持ち出し袋は、常に携帯したり、勤務先や学校に備えておいたりするものと覚えておきましょう。
常用持ち出し袋は、常時携帯することを想定し、できる限りコンパクトなポーチなどを利用して準備しておくのがおすすめです。
「備蓄品」との違い
備蓄品とは、災害に備えて自宅で確保しておく物資のことです。災害の状況によっては、助けがくるまで自宅に留まるしかない場合があります。最低3日間は暮らせるように水や食料を確保しておきましょう。
また、大規模な災害になるとライフラインが停止する可能性があります。水道や電気、ガスがすべて使えなくなる場合を想定し、備蓄品を用意しておくことが大切です。
非常用持ち出し袋の中身リスト
以下では、非常用持ち出し袋の中身リストを最低限準備するもの、あると便利なものに分けて紹介します。袋の中身は定期的に確認し、期限が切れそうなものは新しいものに交換しましょう。
| 種別 | 品名 |
最低限用意するもの | 食料品 | 乾パン、缶詰、栄養補助食品、あめ・チョコレート |
飲料水 | ||
貴重品類 | 通帳、カード、健康保険証、運転免許証などのコピー | |
現金(10円玉を含む) | ||
避難用具 | 懐中電灯 | |
携帯ラジオ | ||
笛・ブザー | ||
衛生用品 | マスク | |
手指消毒液 | ||
生理用品 | ||
救急用具 | 救急箱 | |
常備薬、処方箋の控え | ||
あると便利なもの | 生活用品 | 携帯トイレ、トイレットペーパー |
歯磨きシート | ||
体ふきシート、ウエットティッシュ等 | ||
ライター、マッチ | ||
缶切り、ナイフ | ||
衣料品 | 下着、靴下 | |
長袖、長ズボン | ||
防寒用ジャケット、毛布、雨具 | ||
厚手の手袋 | ||
その他 | カイロ、タオル等 |
以下では、カテゴリ別にそれぞれのポイントを詳しく解説します。
1.食料品
3日分の食料や水を準備できると理想ですが、非常用持ち出し袋が重くなりすぎると避難が遅れるリスクがあります。持ち運べる重さになるように量を調整しましょう。また、調理が必要なものよりも、そのまま食べられるものがおすすめです。
また、家族に幼い子供や高齢者がいる場合は、食べ慣れているものを準備するとよいでしょう。乳幼児なら粉ミルクや離乳食、高齢者はやわらかい食品など、事前に何が必要かを確認して非常用持ち出し袋に入れておきましょう。
また、水の賞味期限は一般的に半年~1年半です。賞味期限を管理する手間を省くためにも、非常用持ち出し袋に入れる水は、賞味期限が15年ほどと長い「長期保存水」を選ぶことをおすすめします。
2. 貴重品類
キャッシュレス決済は停電時に使用できないため、現金を用意しておくと安心です。また、公衆電話用に10円玉や100円玉などの硬貨を準備しておきましょう。
通帳やキャッシュカード、健康保険証、運転免許証などは、通常財布や別の場所に保管していることが多いため、コピーしたものを準備します。災害などの緊急事態の場合では、キャッシュカードや預金通帳、印鑑がなくても、本人確認ができれば預金の払い戻しを受けることが可能です。
3.避難用具
懐中電灯は、1人ひとつずつを目安に準備することが理想です。家族の人数に合わせて準備しておきましょう。携帯ラジオは、手回し式などの本体蓄電タイプのものを選べば、電池切れの心配がありません。
乾電池は、保管状態によっては液漏れする可能性があります。そのため、できる限り液漏れ防止のものを選び、定期的に非常持ち出し袋の中の乾電池の状態も忘れずに確認しましょう。
緊急事態を想定し、体力を消耗せずに周囲に自分の存在を知らせたり、助けを求めたりできる笛やブザーも準備しておくと安心です。また、栓を抜くだけで音が鳴るブザーもおすすめです。しかし、電池が消耗すると適切に稼働しなくなるため、年に1度は電池を交換するようにしましょう。
4.衛生用品
新型コロナウイルス感染症流行下では、感染予防対策も考慮した衛生用品を備えることが欠かせません。清潔なマスクや適切に手指消毒ができるグッズを準備して感染を防ぎましょう。
また、乳幼児や高齢者がいる場合は、普段使用している紙おむつや洗浄剤など、女性では生理用品の準備も必要になります。衛生用品は、食料よりも救援物資が届くのが遅くなる傾向があるため、非常用持ち出し袋には7日分程度確保しておけるとよいでしょう。
5.救急用具
救急用具には、常備薬と処方箋の控えも忘れずに加えましょう。災害の状況によっては、いつ帰宅可能になるのかがわからない場合もあります。処方薬以外にも普段使用しているサプリメントがある場合は、あわせて準備しておくと安心です。
救急箱には、ケガを想定して絆創膏や消毒液、ガーゼ、包帯などを入れましょう。
6.生活用品
災害時は、仮設トイレが設置されるまでトイレが使用できない場合があるため、携帯トイレを準備しておくと便利です。大人1人に対して最低5回分の携帯トイレを準備しておきましょう。
身体の清潔確保のために、歯磨きシートや体ふきシートを準備しておくのもおすすめです。災害時は、歯磨きや入浴も難しくなるため、準備しておくと役立ちます。
7.衣料品
衣類は基本的に動きやすいものを選びましょう。寒い季節は保温性の高い防寒具が役に立ちます。頭の保護や保温に役立つ帽子や、厚手の手袋も準備しておきましょう。
また、避難所では間仕切りなどが設置されるまで時間を要する場合もあり、着替えや排せつも他人から見えやすい状況になる可能性もあります。そんなときのために、体をすっぽりと覆える目隠しポンチョがあると便利です。
8.その他
防寒グッズとして、携帯用カイロを用意しておきましょう。そのほか、レインコートやタオルがあると非常時に役立ちます。
家族構成に応じて加えるグッズ
幼い子供や女性、高齢者がいる場合、上記のグッズにプラスして以下のグッズを加えましょう。
1.幼い子供がいる場合
種別 | 品名 |
食料品 | 離乳食 (子供が食べやすいサイズの携帯カトラリーがあると便利) |
ミルク、使い捨て哺乳瓶 (哺乳瓶がない場合は紙コップを使ってミルクを飲ませる方法もある) | |
貴重品類 | 母子手帳、保険証のコピー |
衛生用品 | 子供用紙おむつ (衛生用品が届くまでには時間がかかるので、1週間分は用意できると安心) |
おしりふき | |
携帯用おしり洗浄機 | |
ウエットティッシュ、コットン | |
生活用品 | ネックライト (子供を抱っこして手が離せないときに便利) |
抱っこひも | |
子供の靴 |
ミルクが必要な子供がいる場合、ミルクの準備も必要になります。しかし、粉ミルクはお湯を準備したり、混ぜたりする調乳が必要であり、避難所で対応することが難しい場合もあります。そのような場合は、常温で哺乳瓶に注いだり、アタッチメントを付けたりするだけでそのまま飲める乳児用液体缶ミルクを準備しておくと便利しょう。
2.女性がいる場合
種別 | 品名 |
衛生用品 | 生理用品 (衛生用品は届くまでに時間がかかるので、多めに用意しておく) |
サニタリーショーツ | |
おりものシート | |
中身が見えないごみ袋 (生理用品を捨てる際に便利) | |
避難用具 | 笛、ブザー (防犯のため、トイレに行くときや夜間に出歩く際は、必ず笛やブザーを携帯する) |
女性の場合、生理用品を用意する必要があります。災害時はストレスがかかり生理不順になる可能性もあるので、生理用品は十分用意しておきましょう。また、災害時は女性を狙った犯罪が増える傾向があります。トイレや夜間に出歩く際は必ず笛やブザーを携帯し、一人暮らしであっても単独行動はできる限り避けるように心がけましょう。
3.高齢者がいる場合
種別 | 品名 |
食料品 | 介護食 |
救急用具 | 持病の薬 |
衛生用品 | 入れ歯、洗浄剤 |
給水パッド | |
デリケートゾーンの洗浄剤 | |
貴重品類 | お薬手帳のコピー (「災害時緊急連絡カード」の活用もおすすめ) |
その他 | 杖 |
補聴器 |
高齢者の場合は、持病の薬や生活に必要な杖や補聴器などを忘れずに入れておくようにしましょう。定期的に医療機関を受診している人は「災害時緊急連絡カード」を準備し、かかりつけの医療機関や服薬内容をまとめて記載しておくと安心です。高齢になると環境変化が大きな負担になりやすく、不安や混乱、不眠などさまざまな症状が起こる可能性があります。なるべく高齢者が1人にならないよう配慮し、正確な情報を伝えることが大切です。
非常用持ち出し袋を選ぶポイント
非常用持ち出し袋は、必要なものが入っていればお好みのバッグで問題ありません。おすすめは、両手が空くリュックタイプです。以下では、非常用持ち出し袋を選ぶポイントを紹介します。
1.両手が空くリュックタイプを選ぶ
非常用持ち出し袋を持参して避難することを考慮すると、体にしっかりとフィットさせられるベルトが胸や腰に付属しているリュックタイプがおすすめです。
非常用持ち出し袋は玄関に置く場合も多く、インテリアにこだわりがある方は、インテリアにも馴染みやすいシンプルなデザインのものを選びましょう。おしゃれなカゴに入れて、取り出しやすい場所に保管しておくのもおすすめです。
2.防水・難燃性のものを選ぶ
避難中、雨によりバッグの中身まで濡れてしまう可能性もあります。そのため、リュックはできる限り防水タイプのものを選びましょう。ただし、通帳や保険証、免許証のコピーなどの濡れて困るものは、念のためジッパー付きのポリ袋に入れておくと安心です。防水機能がない場合は、バッグの中にごみ袋を2枚重ねてからものを入れると、濡れる可能性が少なくなります。
また、災害時に火災が発生することも想定し、リュックは難燃性の高いものを選ぶとよいでしょう。
非常用持出し袋の食料管理は「ローリングストック法」がおすすめ
ローリングストック法とは、日持ちする食材を日頃から備蓄し、定期的に消費しながら新しい食材を買い足していく食料備蓄法のことです。定期的に食材を消費するため、賞味期限切れを防ぎながら食品ロスにも貢献できます。
また、非常食のアルファ米や乾パンなどといった普段食べ慣れないものではなく、日頃から食べ慣れた食材を備蓄することが可能です。非常食は高額になりがちなので、経済的な観点からもメリットが多いでしょう。
さらにローリングストック法を採用することで、非常用持ち出し袋を定期的にチェックする癖がつきます。食材に限らず、乾電池が液漏れしていないか、必要なものは入っているかの確認を定期的に行えるため、おすすめできる手法です。
非常用持ち出し袋に詰めるコツ
非常用持ち出し袋は、必要なものがすべて入れば問題ありませんが、必要なときに必要なものをすぐに取り出せる方が便利です。ここでは、非常用持ち出し袋に中身を詰めるコツを紹介します。
1.すぐ使うものは手前に詰める
避難するために必要な懐中電灯や雨具など、避難時にすぐに使うものは手前に詰めましょう。すぐに使用したいものがリュックの奥にあると、取り出すまでに時間がかかります。スムーズな避難のためにも、すぐに取り出せる場所に入れておきましょう。
2.非常用持ち出し袋の重さは「背負って走れる」程度に
非常用持ち出し袋に中身を詰め過ぎて、やっと背負える状態では、いざというときに避難できません。非常持ち出し袋は、背負って走れるほどの重さを目安に準備しましょう。
非常用持ち出し袋を準備したら、背負って走れるかどうかを試しておくと安心です。
3.カテゴリ別に詰める
衛生用品や貴重品類、薬類など、カテゴリ別にジッパー付きのポリ袋に入れておけば、ひと目で取り出したいものが判別できます。水漏れも防げるので、防水対策にもなるでしょう。
まとめ
非常用持ち出し袋は、自宅を離れたときに救援物資がなくても過ごせるように準備しておくものです。幼い子供や女性、高齢者がいる場合は、それぞれ必要なグッズが異なるため、それぞれの家庭に応じてカスタマイズした非常用持ち出し袋を準備することが大切です。
ぜひ当記事を参考に、非常用持ち出し袋の選び方、中身の詰め方も工夫し、使い勝手のよい非常持ち出し袋を準備しましょう。災害は突然起こるため、事前に非常用持ち出し袋をきちんと準備して備えましょう。
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