防災コラム
インタビュー

デジタルの力で「普段使いできる防災」を個人へ広めたい。株式会社サイボウ・奥村 祥国

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デジタルの力で「普段使いできる防災」を個人へ広めたい。株式会社サイボウ・奥村 祥国

埼玉県に本社を置き、「街から火災・災害をなくす」という理念を掲げる株式会社サイボウ。工事・点検から防災用品の販売まで、防災に関してハード・ソフト両面から事業を展開しています。

そんな株式会社サイボウのECサイト「SAIBOU PARK」では、デザイン性の高い防災用品をセレクトし、家の奥に眠らせることのない「普段使いできる防災用品」を提案しています。

今回は株式会社サイボウ・サイボウパーク事業部の奥村様に、斬新な事業内容や防災への思いについてインタビューをさせていただきました。

■奥村様プロフィール

株式会社サイボウ・サイボウパーク事業部 奥村 祥国 

長くアパレル会社でキャリアを積み、デザイン、店舗開発、ブランドディレクションに従事。
その後、スタイリストやツアーグッズ製作など経験後、外資系スタートアップファッションEC会社に入社し、MDディレクター、クリエイティブディレクターに従事。
大手キャリアEC会社を経て、2020年8月「サイボウパーク」を立ち上げ“防災”をデザイン×デジタルの力で広めていきたいと毎日奮闘中!

デジタルの経験を社会貢献に。防災業界の道へ進む

――本日はよろしくお願いします。まずは奥村様の経歴をお聞かせください。

(奥村様)

私は元々アパレル業界出身なんです。店を持って、商品を作って、販売するという“アナログ”なところからキャリアをスタートしました。その後、ファッションとITを掛け合わせた「ファッションEC」と出会ったのが私の中で転機だったように思います。EC(ネット通販)で物を売る“デジタル”の経験を積んでいきました。

株式会社サイボウに関わった動機は、「デジタルを使って防災を世の中に広めていきたい」というところでした。経営者が学生時代からの知人で、私のEC経験が長かったこともあり声をかけられて。当時は防災業界はかなりアナログでしたし、当社の事業内容も企業や自治体を相手としたBtoB中心でした。今後は防災をBtoCにも広げていきたい、「個人の防災」にも目を向けていきたいという思いがありました。

実際に対談をしている様子。写真左奥村様、写真右(株)IKUSA 五十里

 

――防災というジャンルに関わるのはその時が初めてでしたか?

(奥村様)

そうですね。自分が経験してきたデジタルの知見を社会の役に立てたいという思いもあり、このジャンルを選びましたが、元々防災への意識が高い方ではなかったんです。

親族が東日本大震災を経験しているので危機感は持ちつつも、知識もなく、特に備えもしていませんでした。でも「私のような人が世の中にたくさんいるのでは?」とも思ったんです。

業界に染まっていない一般人としての視点は、事業を展開する上でプラスになった部分もあると思います。

――その視点が、御社の斬新な取り組みに生かされているんですね!

誰でもアクセスできる「防災公園」を作りたい

――御社のECサイト「SAIBOU PARK」はどのように開発されたのですか?

(奥村様)

立ち上げのために、ブランド名を決めました。「SAIBOU PARK」という名前は、東京都内各地にある「防災公園」から取っています。災害が起きた時、避難場所や救出活動の拠点になる公園があるんです。ベンチが炊き出しのできるかまどになったり、手動で水を汲み上げられる水道ポンプがあったり、いざという時はそこに逃げ込めるっていう場所ですね。    

ただアナログの公園は、近くにないと助けてもらえない。だから私たちはデジタル上に誰でもアクセスできる防災公園を作ろうと、「SAIBOU PARK」と名付けました。そこに行けば防災グッズを買って備えたり、防災に関する情報を受け取れたりできる……そんな仮想の空間を表現しています。

そしてエンジニアや私含め4人で「SAIBOU PARK」のサイトを立ち上げました。ブランドのロゴはECサイト用に、一般のお客様向けのものを用意しました。

――ブランド名、覚えやすいですね! サイトの作りも非常におしゃれで、まるでファッションサイトのようです。

(奥村様)

防災っぽくないですよね。そこは大事にしている部分です。親しみやすく、ファッション感覚でECサイトに来ていただきたいと思っています。防災業界は「サイトの作りがひと昔前のもので垢抜けない、買いづらい」ということがまだまだあって、サイトのデザインから防災の概念やイメージを変えたいんです。

防災をライフスタイルとして、身近なものにしていきたいですね。

――その思いがサイトからすごく伝わってきます。

(奥村様)

私たちはその部分で共感しあえていますよね。

SAIBOU PARKのTOPページ

 

普段使いできる防災を広めたい

――「SAIBOU PARK」への思いをお聞かせください。

(奥村様)

防災のライフスタイル化を目指していく上で、非日常と日常の境目をなくしていこうと、フェーズフリーな商品の開発などに取り組んでいます。

防災グッズって、買って満足してしまって、普段押し入れの奥とか見えないところに置いちゃう。そしていざという時に「あれ??」となりがち。そうではなくて、普段から使えていざという時にちゃんと役立つ。そういうものを意識して作っています。

そのために、家庭にそのまま置いておいても絵になるものを取り揃えています。数はまだ少ないですけど、SAIBOU PARKは何でもかんでも置いてある場所ではない。厳選したおしゃれなものを防災用品として販売する、そのコンセプトは今後も変わらないと思います。

ライフジャケットと同等の浮力を持ち、普段使いのリュックが水害時にそのまま役に立つ「フロートライフリュック」。そのほか総合バッグブランド「ace.」とのコラボで開発した「フロートビズリュック」なども展開している。

 

(奥村様)

事業開始当初はこのような商品がほとんどなくて、「なければ自分たちで作ろう!」と進めてきました。しかし最近はコンセプトにマッチした商品が出てきています。また共感していただく機会も増えてさまざまな企業とのコラボが進んでいます。これがスタンダードになって発展していければいいなと思います。

日本は災害大国。みなさん危機意識は頭の片隅にあるけど、行動に移していないという人が多いと感じています。そういう方のためにもっと取り組みを広げていきたいですね。

当社では他にも、防災に役立つ情報を発信しているデジタルメディア「SAIBOU PARK MAGAZINE」、備蓄品を管理できるアプリ「SAIBOU PARK」を運営しています。これらを網羅的に活用していただけたら嬉しいです。

防災は個人で備える必要があることを知ってほしい

――「SAIBOU PARK」立ち上げから3年、苦労されたことはありますか?

(奥村様)

結構ありますね(笑)。

防災って、ニッチなジャンルなんですよね。「個人で何かしなきゃいけない」ということが分かっていただきにくいカテゴリだと感じています。「いざという時は国や行政が助けてくれる」という考えがあるかもしれないけれど、特に首都圏のような人口密集地では、非常食やトイレ、寝袋などは公的な備えだけではカバーできないと思います。

またタワーマンションの高層階はエレベーターが停まってしまうと、家から出ることも難しくなると考えられます。さまざまな事態を想定すると、自分の家で備える必要が出てきているんですね。

ただトイレットペーパーのような生活消耗品と違って、防災用品って今なくても困らないもの。そういう部分にはこれまで苦労してきましたね。

そうは言っても老若男女全ての方に関係があることが防災です。可能性は広いので、そこにヒットさせるには、時間をかけて取り組み続けなくてはいけないと考えています。サイボウは「ECサイト」「マガジン」「アプリ」のトライアングルで間口を広げてきたので、徐々に目に留めてもらえる機会が増えてきました。一歩ずつ、ゆっくりですけど、進んできていると感じています!

今後も防災に特化したライフスタイルブランドとして展開していきたい

――これからの展望をお聞かせください。

先ほどもご紹介した「浮くリュック」のような、普段使いできる災害グッズを世の中にどんどん出していきたいです。このリュックは今、百貨店を中心に店頭に出ていますが、もっとお客様に見て、触れて、使っていただく機会を増やしたいです。

また「SAIBOU PARK MAGAZINE」も1週間で1万PVほど見てもらえるようになってきました。無料で誰でも見られるので多くの方にリーチできるし、防災情報を読んでもらえればためになるので、こちらにも力を入れていきたいですね。

ありがたいことに取材の依頼も非常に多くいただいていますし、ファッションブランドとのコラボ予定も広がっています。1社では幅が狭くなってしまうので、さまざまな企業と協業しながら、防災に特化したライフスタイルブランドとして進化していきたいと考えています。

――共に業界を引っ張っていくということでしょうか。

そうですね。力を合わせて問題提起して、より多くの方に(防災の重要性を)知ってもらうことが必要なんじゃないかと考えています。

――今後ぜひいっしょに防災のイメージを変えていきたいですね! ありがとうございました!

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