日本は地震が多い国です。さらに近年は、数十年に一度といわれるような台風や大雨、大雪など、各地で自然災害が頻発しています。万が一災害が発生したときに、家族の一員であるペットを守る準備はできていますか?
本記事では、ペットのなかでも「猫」に焦点をあて、防災対策が必要な理由と、備えておきたい防災グッズ、猫を守るために飼い主が日頃からできることについて紹介します。
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猫の防災対策できていますか?
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、多くのペットたちが自宅に取り残され、飼い主と離れ離れになってしまいました。ペットと一緒に避難できた人たちも、避難所では動物アレルギーを持つ人を含む大勢の人と同じ空間で過ごさなければいけないため、苦労することが多かったといいます。
災害時には、人命の救護が優先されます。行政機関はペットの対策までは手が回らず、ペットフードやペット用品も、なかなか避難所に届かないことが多いです。家族の一員であるペットを守れるのは飼い主しかいません。万が一の災害に備えて、しっかり防災対策をしておきましょう。
万が一に備えておくべき猫の防災グッズ
災害が発生したときのために備えておきたい防災グッズの一例を紹介します。避難が必要になったときのために、防災グッズには優先順位を付け、優先度の高いものはすぐに持ち出せるところに保管しておきましょう。避難の妨げになるような重いものや大きなものは、避難後に安全が確認されてから取りに帰ることもできます。屋外の倉庫や駐車場など、持ち出しやすい場所はどこか考えてみてください。
なお、防災グッズの優先順位は環境省の人とペットの災害対策ガイドライン ‐ 環境省(PDF)を参考に付けたものです。
優先度1位 猫の生命と健康を維持するためもの | フードと水 薬・療法食 キャリーバッグ・ケージ ハーネス(リード付) トイレ用品 食器 |
優先度2位 猫と飼い主に関する情報 | 迷子札 猫の写真 ワクチン証明書・ペット保険の証明書 |
優先度3位 ケア用品やおもちゃ | ケア用品 洗濯ネット おもちゃ |
優先度1位:猫の生命と健康を維持するためのもの
最も優先度が高いのは、猫の生命と健康を維持するためのものです。
- フードと水
おそらく、避難所にはなかなかペットフードが届きません。普段食べなれているフードを5日(できれば7日以上)分は用意しておきましょう。水は、できれば軟水が望ましいです。ミネラルが多く含まれている硬水は尿路結石になる可能性があります。 - 薬・療法食
災害時には、動物病院も閉まってしまうかもしれません。物流が滞って薬や療法食が手に入りにくい状態になる可能性もありますので、薬や療法食も準備しておきましょう。 - キャリーバッグ・ケージ
脱走しないように、猫は必ずキャリーバッグに入れて避難します。避難所でずっと狭いキャリーバッグの中だと猫がストレスを感じてしまうので、ポータブルケージも用意しておきましょう。 - ハーネス(リード付)
猫のお世話をするときなどに、キャリーバッグやケージの扉を開けた一瞬の隙に猫が脱走してしまう可能性もあります。また、避難所で猫を自由にさせておくと周りの方に迷惑がかかることもあるかもしれません。避難生活の間は、リード付きのハーネスを必ず着用させましょう。猫の体は柔らかいので、ハーネスにゆとりがあると上手に脱いでしまいます。なるべくしっかりとしたものを選びましょう。 - トイレ用品
ポータブルトイレ、猫砂、ペットシーツ、排泄物処理用の袋などです。においが普段と違うと、警戒してトイレを我慢してしまう猫もいます。猫砂やペットシーツはいつも使っているものを用意しておきましょう。 - 食器
フードや水を入れる食器も必要です。かさばらないような折り畳みの食器や、持ち運びに便利な軽量の食器がおすすめです。
優先度2位:猫と飼い主に関する情報
次に優先度が高いのは、猫と飼い主に関する情報です。避難の途中や避難所で万が一猫とはぐれてしまったときに、以下のものを用意しておくと探しやすくなります。
- 迷子札・首輪
迷子札とは、飼い主の名前と連絡先を記載した札です。できれば普段から首輪に付けておくのが望ましいですが、嫌がるようなら、避難時にすぐに付けられるように防災バッグの中に入れておきましょう。そもそも首輪自体を嫌がる猫も多いので、普段から慣らしておくことも大切です。 - 猫の写真
猫の写真は、一番かわいいベストショットではなく、全身写真と猫の特徴(模様やしっぽの形など)がよくわかるものを用意します。飼い主であることを証明するために、ご自身も一緒に写っている写真があればなお良いでしょう。 - ワクチン証明書・ペット保険の証明書
避難所では、ほかの動物と共同で過ごすことになります。病気をうつす・うつされることがないように、きちんとワクチンを接種し、接種証明書を防災バッグの中に入れておきましょう。接種証明書は、原本ではなくコピーでも構いません。また、避難所で体調を崩すこともあるかもしれません。動物病院にかかることになったときのために、ペット保険に加入しているならペット保険の証明書も忘れずに用意しておきましょう。
優先度3位:ケア用品やおもちゃ
優先度2位までの防災グッズを用意したうえで防災バッグにまだ余裕があれば、以下のようなものがあると避難生活に役立ちます。
- ケア用品
タオル、ウェットティッシュ、ブラシなど、普段お世話をする際に使っているものがあると便利です。 - 洗濯ネット
洗濯ネットに入れると落ち着く猫は多いので、用意しておくと安心です。ただし、避難所で「興奮しているから」「暴れるから」といって、長時間洗濯ネットに入れておくのは避けてください。洗濯ネットはたしかに通気性は良いですが、夏は熱中症になることもあります。 - おもちゃ
猫が避難所で怯えてフードを食べなくなったり、機嫌を損ねたりしたときも、お気に入りのおもちゃを用意しておくとなだめることができます。
災害時に猫を守るために日頃からできること
災害時に一緒に暮らす猫を守るために、防災グッズを用意すること以外にもできることがたくさんあります。ここからは、日頃からやっておくべき防災対策を紹介します。
住まいの防災対策
災害時には、まず飼い主が無事でいなければ、猫を守ることはできません。自分自身と同居する家族の身を守るために、まずは住まいの防災対策をしっかりすることが大切です。例えば地震対策なら、耐震強度の確認や、家具の固定などが挙げられます。そのうえで、猫の飼育ケージを、固定した家具のそばや、落下物の危険がない安全な場所に配置しましょう。
猫に室内で自由に過ごさせている場合は、十分な耐震性のある建物であれば、災害時に猫が逃げ込める安全な場所を自宅内に用意することが安全の確保につながります。例えば、シェルターとして一部屋のみ地震対策を施す、押し入れを補強するなどです。
しつけと健康管理
災害発生時や避難時は、いつもと違う状況に猫もパニックになってしまう可能性があります。猫は犬のように「しつけ」をすることは難しいですが、緊急時に速やかに避難できるように、キャリーバッグ、首輪やハーネス、ほかの人や動物などに、日頃から「慣れさせておく」ことが大切です。避難所で他人に迷惑をかけないためだけでなく、猫自身のストレス軽減にもつながります。
また、避難所では、猫がストレスから体調を崩してしまったり、ほかの動物から病気をうつされてしまったりする可能性もあります。予防接種や、ノミ・ダニの駆除と予防など、日頃からしっかり健康管理をしておきましょう。万が一脱走してしまったときの繁殖を防止するために、不妊去勢手術も必ずしておいてください。不妊去勢手術は、性的ストレスの軽減や感染症予防の効果もあります。
マイクロチップの装着
マイクロチップとは、直径2mm 程度、長さ8~ 12mm 程度の円筒型のチップです。専用のリーダーでチップに記録されている15桁の数字(個体識別番号)を読み取ると、データベースから飼い主の情報を探すことができます。マイクロチップは、犬や猫の首の後ろに専用の注射器で埋め込みますので、一度装着すれば首輪や迷子札のように外れる心配がありません。
2022年6月1日から、このマイクロチップの装着・登録が義務化されました。犬や猫を迎え入れたときや、飼い主の情報(住所・氏名・電話番号)が変わったときは、登録(変更)手続きを行わなくてはなりません。ペットショップやブリーダー以外から譲り受けた、または2022年6月1日以前から飼っている犬・猫は義務化の対象ではありませんが、装着が推奨されています。
参考:「犬と猫のマイクロチップ情報登録」 ‐ 環境省(PDF)
避難所や避難ルートの確認
避難指示などが出た場合に備えて、自分の地域の避難所の場所と避難ルートを確認しておきましょう。また、避難所には猫を連れて行けるのか、連れて行ける場合は注意事項なども調べておく必要があります。ハザードマップも確認し、どのような被害が想定されるかを考えなら対策を講じましょう。
実際に避難訓練を行うと、所要時間や危険な場所などをチェックできます。猫を連れて避難訓練を行う場合は、誤って猫を脱走させないように注意してください。
家族やご近所と防災について話し合う
緊急時に速やかに避難できるように、家族やご近所の方と、連絡方法や集合場所、ペットの避難方法、役割分担など、防災について話し合っておきましょう。避難所では多くの人と共同で過ごすことになるので、普段からコミュニケーションを取り、良好な関係を築いておくことも大切です。
猫の預け先の確保
自宅近くに猫と一緒に避難できる避難所があるとは限らないので、一時預け先を確保しておきましょう。親戚や友人など、できれば複数確保しておくのが望ましいです。
まとめ
東日本大震災では、多くのペットたちが飼い主と離れ離れになってしまいました。災害時の行政機関による支援は人の救護が基本であり、ペットの対策までは手が回らないことが多いです。ペットフードやペット用品も、なかなか避難所に届かないかもしれません。
災害時に愛するペットを守ることができるのは、飼い主だけです。防災グッズを用意し、優先度の高いものから持ち出しやすい場所に保管しておきましょう。あわせて、住まいの防災対策やペットの健康管理、マイクロチップの装着などを実施しておき、日頃から防災に備えておくことが大切です。
参考:人とペットの災害対策ガイドライン ‐ 環境省(PDF)
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