いずれやってくるといわれている大震災。あなたの会社では防災対策を十分に徹底できていますか?
震災や水害の他、火災、噴火、二次被害など、視野に入れなければならない災害の被害が多いのが、日本の現状といえます。
企業の防災対策は、一般家庭とは異なり「やらなければならないこと」「知っておかなければならないこと」が非常に多いです。そのため、具体的にどんな対策をしたらいいのかわからない……と悩んでいる担当者が少なくありません。
しかし、企業の防災対策はこれまでに実際に行われた事例を参考にすることで、自社に合った対策を進めやすくなります。
そこで、今回は企業における防災対策例をご紹介します。すぐにまねできる事例をピックアップしていますので、現時点での防災対策に不安がある方は参考にしてみましょう。
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企業防災の事例まとめ
国内で展開している企業は、一体どのような企業防災を実施しているのでしょうか。さっそく、企業防災の事例について、詳しくご紹介します。
事前にシナリオを提示しない防災訓練
企業防災の事例として、まず挙げられるのが「シナリオなしの防災訓練」です。
防災訓練といえば、あらかじめ「どんな行動をすべきか」「誰が何をするのか」などが明確になっていることがほとんど。シナリオに沿って行動することで、現場の混乱を防ぎスムーズに対処できるようになることから、企業防災の定番といえます。
しかし、事前にシナリオを共有したうえで防災訓練を実施してしまうと、いざというとき、「イレギュラーな事態」に対応できなくなってしまう可能性があります。災害が発生した際、必ずしもシナリオ通りに動けるとは限りません。
もしかしたら、一切想定していなかったような事態に陥ることもあるでしょう。そのため、防災訓練を実施するのであれば、シナリオに沿った訓練だけではなく、シナリオを提示しない防災訓練も定期的に実施することが大切です。
事前に防災訓練を実施する日程だけを共有しておき、訓練時の対応は現場に任せてみましょう。これにより、社内の防災対策の「課題」を見つけ出すことができます。改善すべき内容が明確になりますので、ぜひ定期的にシナリオなしの防災訓練を実施してみてください。
噴火リスクに備えた「火山灰対策」「粉塵侵入防止対策」
日本の災害として忘れられがちなのが「噴火のリスク」です。
地震や水害のように、頻繁に発生したり、毎年悩まされたりするような災害ではないことから、活火山の噴火リスクを想定した災害対策はあまり実施されていません。
しかし、日本の歴史を見てみると活火山による噴火は何度も発生しています。そもそも日本には100を超える活火山が存在していて、そのうちの一部が2000年以降にも噴火しているのです。
活火山の噴火による被害は、活火山周辺地域のみにとどまりません。火山灰や粉塵などの影響が都心部にも表れるといわれています。
近年は、日本で最も大きい山として知られる「富士山」の噴火リスクがたびたびメディアで報じられるようになりました。万が一富士山が噴火したら、周辺地域はもちろんのこと、都心部など日本全国に影響を及ぼすと考えられています。
そのため、活火山の噴火リスクに備えた「火山灰対策」「粉塵侵入防止対策」などが必要です。最近では、火山灰対策などに便利なアイテムが多数販売されていますのでチェックしておくとよいでしょう。
自然災害の種類・地域別の対策マニュアル整備
会社を守るための防災対策として、多くの企業が取り入れているのが「自然災害別の対策マニュアル整備」です。
一口に「自然災害」といっても、日本ではさまざまなものがあります。「大地震」「津波」「活火山の噴火」「台風」など、どれも同じ対策で十分とは言い切れません。
それぞれ必要な対策には違いがありますので、企業は自然災害別に対策マニュアルを作る必要があります。これにより、企業や顧客の損害が回避しやすくなるだけでなく、事業の継続を図りやすくなるのです。
また、自然災害別に対策を練る際には、会社のある地域の特色を踏まえてマニュアルを整備しましょう。具体的な自然災害の被害は、地域によって大きく異なるのが現状です。例えば、海や川沿いであれば「津波」「洪水」のリスクが大きいですし、山沿いであれば「噴火」「土砂崩れ」「雪崩」などのリスクが大きいものです。
どんな対策をどれくらいの規模で整備すべきかは、地域の特色などに沿って検討しなければなりません。
そのため、自然災害別に対策マニュアルを整備すると同時に、地域性から見て適切な災害対策を検討してください。
機械類・家具などの転倒防止
企業の防災対策で忘れてはならないのが「機械類や家具などの転倒防止」です。
大地震が発生したとき、設置してある機械類やオフィス家具などが転倒するリスクがあります。中でも背の高いものは、転倒しやすいうえに、二次被害にもつながりやすいのが現状。「転倒した機械類にぶつかってけがをする」「転倒したオフィス家具の下敷きになって避難が遅れる」など、従業員の人命に大きく関わります。
そのため、今一度社内の環境を確認し、転倒防止が必要な場所を明確にする必要があります。転倒防止の方法は、市販されている「転倒防止グッズ」の活用、機械類や家具の置き場所の変更などがベストです。
また可能であれば、機械類や家具などを「背の低いタイプ」に買い替えて、従業員の安全確保ができるようにするのもよいでしょう。
いずれにせよ、機械類や家具の転倒防止は従業員や顧客の人命を救うことにつながりますので、最低限実施しておかなければならない対策といえます。
各部署の対応のマニュアル化
人命に直結する防災対策ではないものの、企業にとって必要な対策であるのが「各部署の対応のマニュアル化」です。
大きな災害が発生すると、「社内がどうなっているのか」「従業員は無事なのか」「顧客先への連絡はどうするのか」など、速やかに確認しなければならないことが多いもの。しかし、わずかな人数で災害時の対応を担うのは困難といえます。災害によって現場が混乱しているのか、社内外に向けて対応をするのは難しいでしょう。
だからこそ、部署ごとに災害時の対応をマニュアル化することが大切です。
部署ごとに「社内の安否確認の対応」「顧客先への連絡」「地域や近隣の情報収集」「避難スペースの整備」など、誰がいつ何をするかをしっかりと決めておくことで、いざというときにスムーズに社内外の全体像を把握することができます。
これらは、業務の早期復旧のためにも必要な対応であるため、最低限マニュアル化しておかなければなりません。
備蓄の徹底・周知
企業が防災対策をするのであれば、欠かせないのが「備蓄」です。食料や懐中電灯、毛布、簡易トイレなど、災害が発生したときには備蓄品が大活躍します。そのため、従業員の人数や顧客の来社・来店を想定して必要な量を確保しておく必要があるのです。
しかし、ここで注意しなければならないのが「周知」です。きちんと備蓄を進めておいても、社員全員がその事実を把握していなければ、災害が発生した際にスムーズに活用することができません。「どこにあるのか」「どれくらいあるのか」「そもそも備蓄しているのか」など、社員がよく理解していないケースは多いです。備蓄をするのであれば、社内全体への周知を前提として進めていきましょう。
また、備蓄を徹底するためには「定期的な見直し」が必要です。災害アイテムや食料品をチェックしてみると、「使用期限」「消費期限」などが記載されています。いざというときに「使えない」といった事態を避けるためには、定期的に備蓄品の使用期限や消費期限を確認しなければなりません。必要に応じて買い替えたり、買い足したりするなど、臨機応変な対応が求められます。
防災対策のために備蓄をすると、ついつい満足してしまいがち。しかし、現場で活用できるようにするためにも、数か月を目安に定期的に見直しをしてください。
定期的に備蓄品の期限を見直し、買い足しを行うことを、「ローリングストック」と呼びます。ローリングストックの詳細については、こちらの記事をお読みください。
ローリングストックとは?防災で役立つ基本知識
安全確認方法の明確化
企業における災害時の対応では「安全確認」が必要不可欠ですが、その具体的な方法を明確にしておかなければなりません。
現場や会社周辺の安全確認方法を明確にしておくことは、、従業員及びその担当者の身を守ることにつながります。
大きな災害が発生した場合、社員を早めに帰宅させる会社は多いもの。しかし、むやみに帰宅させるとかえって危険なケースもあります。だからこそ、現場で適切な判断を下すために、安全確認の方法を明確にする必要があるのです。
会社や従業員を守るためにも、今一度「安全確認の方法」について慎重に計画してみましょう。
防災機材の導入
災害が発生した際に、役立つのが「防災機材」です。
防災機材とはいっても、大規模な災害用機材ではありません。真冬の被災に備えた暖房器具や、真夏の避難生活で熱中症を予防するための冷房機器などが防災機材として挙げられます。これらは、一時の避難生活を快適にしてくれるだけではなく、天候による体調不良などの回避につなげることができるため、企業であれば積極的な導入がおすすめです。
ただし、防災機材を導入する際に注意しなければならないのが、「電力を必要としない機材」を選ぶことです。災害が発生すると電気がストップしてしまうリスクがあります。電気の力で運転する機材を導入しても、災害時に使用できない可能性がありますので注意しましょう。
ちなみに、電力を使用しない機材としては、灯油をエネルギーとする暖房器具、ガスを使った冷房器具などがおすすめです。
自治体や地域との連携
見落としがちな企業防災として、ぜひ知っておいてほしいのが「自治体や地域との連携」です。
企業防災は、日ごろから自治体や地域とコミュニケーションを図り、交流を深めておく必要があります。なぜなら、いざ被災してしまったときに、自治体や地域と一丸となって行動するシーンが増えるからです。自治体や地域と交流を深めておくことで、スムーズな情報共有にもつながるでしょう。
企業のイベントに積極的に招待する、地域の方向けにサービスを提供するなど、日ごろから近隣を意識した取り組みを取り入れることが大切です。
また、ときには企業が自治体や地域の方に向けてサポートする立場となるかもしれません。物資が不足する中で、自社の商品を近隣に配布する、会社の一部のスペースを避難場所として提供するなど、さまざまな対応が求められることがあるでしょう。このような状況になっても、普段から自治体や地域と連携を図っておけば、スムーズに貢献しやすくなります。
過去の自然災害のリサーチと適切な対策の明確化
過去の自然災害をリサーチすることは、企業防災において重要な対策です。
自社の周辺で過去にどのような自然災害が発生したのか、どれくらいの規模の災害が発生したのかなどをあらかじめ把握しておくことで、自社にとって適切な対策を練ることができます。
水害が多いエリアであれば、「いつ台風が直撃してもいいように土嚢を準備しておく」「出社が難しい場合の各社員の業務内容を決めておく」など、事前に準備しておけることは多いです。
過去の自然災害をもとに、自社に合った対策を取り入れるようにしましょう。
従業員や顧客の安否確認ができる体制を整える
企業が防災に努めるのであれば、安否確認の体制を整えることが大切です。
万が一大災害が発生してしまった場合、社内にいた従業員が無事であるのか、また外出していた従業員は社内もしくは自宅に戻れるのか、などは最低限把握しておかなければなりません。
また、大切な顧客の安否確認も重要です。必要に応じて顧客に対し支援を送ったり、サポートしたりする必要があるからです。
災害が発生した後、スムーズに安否確認するためには「体制を整えること」が必要といえます。災害が発生するとスマホやパソコンのインターネットがつながりにくくなることや、通話回線が込み合ってなかなか電話ができないことが想定されるでしょう。
そのため、「なかなか連絡がつかなかったときのため」として、専用の安否確認サービスや通信会社の伝言ダイヤルなどのサービスを活用する必要があります。必ず、従業員や顧客にも上記のサービス利用について説明しておき、「万が一の連絡手段となること」を共有しましょう。
バックアップシステムの導入・整備
企業の防災対策では、「ソフト面」の対策が必要不可欠です。
業種にもよりますが、パソコンやクラウド、ハードディスクなどに大切なデータを保管している企業は少なくありません。万が一、災害によってファイルが破損してしまったら、企業にとって重要なデータを失うこととなってしまいます。
特に、システムや顧客データ、売上情報などは失ってしまうと、大きな損害となってしまう可能性が高いです。こうした損害を回避するためにも、必要なのが「バックアップシステムの導入及び整備」です。
いつ災害が起き、ハード機器などが破損してしまってもいいように、バックアップシステムを取り入れておきましょう。
バックアップをきちんととっておけば、万が一パソコンやハードディスクが災害時の落下などで故障してしまっても、大切なデータを守ることができます。
最近では気軽に利用できる安価なバックアップシステムなども展開されていますので、ぜひこれを機に利用を検討してみてはいかがでしょうか。
BCPの作成と徹底
BCPの作成は、企業の防災対策において基本中の基本です。
BCPとは、事業継続計画のことであり、業務の復帰を円滑化し、被害を最小限に抑えるために重要な計画といえます。実際、過去には浸水や停電といったさまざまなトラブルに見舞われた企業が、徹底したBCPによってデータの損失は0%、事業復旧までわずか数日など、驚異の効果を発揮した事例があります。
ただし、BCPの作成で注意しなければならないのが「定期的に見直すこと」です。BCPは作成しても、定期的に、現時点の自社や発信されている災害情報と照らし合わせて見直していかなければなりません。
「作りっぱなし」では、いざ災害が発生したときに、うまく活用できない内容となっていることがあります。「業績が変わった」「災害で想定されるリスクが高くなった」など、企業も予測できる災害も日々変化しています。しっかりと対応できるように、BCPの対策と見直しを徹底していきましょう。
楽しく学べる防災アクティビティの活用
企業防災の一環として取り入れられている、のが、「楽しみながら防災を学べる」という特徴をもつIKUSAの防災アクティビティです。
IKUSAのアクティビティは「体験」や「楽しさ」に重点を置いており、まず「防災に興味を持ってもらうこと」を目標としています。そのため、防災に興味・関心がない人にも積極的に参加してらえるような設計がされています。
また、チームでの協力が必要となるアクティビティが多いので、普段の防災訓練ではなかなか得ることのできない、コミュニケーション力の向上やチームビルディングといった効果も期待できます。
アクティビティは、身体を動かして防災を学ぶ「防災運動会」や、オンラインで競争を楽しめる「おうち防災運動会」、頭を使った謎解きを楽しめる「防災謎解き」などの種類があり、目的に合わせてお選びいただきます。
穴吹エンタープライズ様にご利用いただいた「防災運動会」のアンケート結果は、こちらの記事にてお読みいただけます。
楽しくて役に立つ!防災運動会のアンケート結果を大公開
防災訓練の参加率が低い、社員の防災意識を高めたい、という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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企業防災を進めるためのポイント
企業防災を進める場合、どのようなポイントに着目しながら計画を実行すればいいのでしょうか。ここからは、企業防災を進めるためのポイントについて、詳しく解説します。
防災担当を設定する
企業防災をスムーズかつ適切に進めたいのであれば、社内で防災担当を設定することをおすすめします。
設定した防災担当が行うことは、「防災対策」「実施している防災対策情報の発信」「防災イベントの手配」などです。
企業によっては、本業と並行しながら社員が防災対策を実施するケースが多いもの。しかし、本業と並行では、十分な防災対策ができるとは言い切れません。
専門の「防災担当」を設定することで、より効果的な対策を講じやすくなります。防災対策は企業にとって重要な取り組みですので、ぜひ「防災担当」の設定を検討してみてください。
定期的に社内で防災に関する情報を発信する
定期的に社内で防災に関する情報を発信することは、企業にとって必要な取り組みです。
現在、多くの企業が防災対策を実施していますが、意外にもそのことを理解していない社員がいるのも事実。「勤めている会社でどんな防災対策をしているのか知らない」といった社員は珍しくないのです。
こうした状況は、いざ災害が発生したときに現場の混乱を招く可能性がありますし、スムーズに対処できなくなってしまうリスクがあります。例えば「どこにどれくらいの備蓄品が保管してあるのか」「消火器はどこにあり、どう使うのか」など、社員が知っておかなければならないことはたくさんあるでしょう。
社内で「防災対策がよくわからない」という社員がいる状況にならないよう、前項で触れた「防災担当者」などが定期的に情報を発信してください。
定期的に訓練を実施する
定期的な訓練は、実践で生きるノウハウを身に付けることにつながりますので、企業防災に必要です。
主に「避難訓練」「消火訓練」「人命救助」「業務再開までの立ち回り」などが訓練のテーマとして候補に挙がります。どれも、企業にとって必要な訓練ですので、社員の参加を募って実施しなければなりません。
また、自社だけで計画から実施を行うのではなく、不定期で防災関連企業などのプロの手を借りることも大切です。プロ目線で「現時点の課題」「地域性から見た必要な訓練」などのアドバイスを受けられるため、より会社のためになる防災計画を立てやすくなります。
まとめ
今回は、企業における防災対策例についてご紹介しました。
災害による深刻なトラブルや損害などを防ぐためには、日ごろの防災対策が必要不可欠です。そのためには、実際にほかの企業が実施している防災対策事例の理解を深める必要があります。
現在、企業の防災対策について不安や悩み、疑問を抱えている方は、本記事を参考にしながら、さっそく自社に合った対策計画を立てていきましょう。
防災士監修の防災マニュアル「担当者必見 企業向け防災完全ガイド」とは?
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1993年生まれ。栃木県在住。一児のシングルマザーライター。Web媒体・紙媒体にて、ジャンルを問わず多くのメディアで執筆。BtoB向け記事の他、ママ目線でのコラム執筆も手掛ける。専門家や起業家などへの年間インタビュー数200人を目標に、パワフルに活動中。