突如発生する災害から私たちを助けてくれる存在が防災リュックです。非常時に少しでも身を守れるようにあらかじめ防災リュックの準備をし、普段から防災への意識を高めていくことが重要です。
大人のぶんの防災リュックを用意するのはもちろんのこと、少し体が大きくなり、さまざまなことに興味をもちだす小学生の子どものぶんも個別に用意するとよいでしょう。ただし、子どもと大人で必要なものや、もち運べる量は異なります。そのため、なにをもたせればよいのかわからない人もいるのではないでしょうか。
本記事では、防災リュックとはなにか、小学生になったら防災リュックを作るとよい理由、防災リュックを作る際のポイント、中身のリストについて紹介します。
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防災リュックとは
防災リュックとは、災害が発生した際に身を守れるように自宅に備えておくリュックのことです。中身は食料や水、防災グッズなどが入っており、あらかじめ家庭で用意しておくものとなります。
避難所までたどり着くことを目的としており、必要最低限の量にするのが一般的です。
市販の防災セットを買えば一通りそろえることもできますが、必要なものは人によって異なり、性別や年齢によっても変わるため、必要に応じてカスタマイズする視点をもつことが重要です。
また、必ずしもリュックである必要はありませんが、両手がふさがらず、効率よく物を入れられるためリュックがおすすめです。
小学生になったら防災リュックを作るとよい理由
子どもが小学生になるまでは防災リュックを自分でもち運ぶことは難しく、親の防災リュックに子どものぶんも入れてしまうのがよいでしょう。
しかし、小学生にもなると、多くはランドセルを背負うようになり、自分のものを自分で管理し、もち運ぶという習慣が生まれます。また、さまざまなことに興味をもつ時期であり、防災意識を高めることにもつながるため、子どもの防災リュックを作るにはよいタイミングといえます。
ただし、本当にもち運べるかどうかは個人の体格や体力にも左右されるため、低学年のうちは親の防災リュックに入れるなど、状況に応じて防災リュックを作るかどうかを決めるとよいでしょう。
防災リュックを作る際のポイント
子どもの防災リュックを作る際のポイントとして、親だけで子どもの防災リュックを作るのではなく、子どもと一緒に作ることが一番のポイントです。
子どもの防災リュックに限らず、適切なタイミングで防災リュックの中身を有効活用するには「なにが入っているか」を把握していることが重要です。そのため、親がひとりで作ってしまうと子どもはなにが入っているかわからなくなってしまいます。
また、子どもが防災リュックを背負えるかどうかも確認しておかないと、いざ避難するときになって子どもの力だと重くて背負えないということも起こりえるため、注意が必要です。
災害状況について話しながら、防災に興味をもってもらい、なにを入れるかを話し合うようにしましょう。話し合うことで子どもの視点で必要なもの、あるいは不要なものがわかることもあります。
防災リュックに入れたいもの
ここでは防災リュックに入れたいものを紹介します。
ただし、背負えなくなっては本末転倒であるため、以下に記載するものを全て入れる必要はありません。「軽さ」を重視し、実際に背負ってみたときの重さや子どもの様子を見ながら、本当に必要なものを厳選することが重要です。
非常食
一般的に非常食は3日分とされることが多いものですが、子どもの力や体力を考えると1日分でもよいでしょう。大人のリュックにも非常食はあり、家の備蓄品から取り出すこともできます。
また、子どもが食べられるものを選ぶようにしましょう。たとえば、食べ物の好き嫌いに厳しい家庭でも、災害時には子どもがしっかりと食べ、エネルギーが補給できることを優先し、好きなもの、食べやすいものを選ぶように心がけましょう
おやつ
非常食と似ていますが、おやつは災害時の子どものストレスを一時的にでも和らげるのに有効です。日持ちするのであれば普段から食べているお気に入りのお菓子などでも問題ありません。
保存水
保存水とは、災害時のために備えておく飲料水で、保存期間も3年以上となり、長期間の保存でも腐敗しないことが特徴です。
重く、かさばるものの、500mlペットボトルであれば1日分に相当する2本は入れたいところです。保存水を入れることを優先し、ほかのもので重さを調整するとよいでしょう。
防災カード
防災カードとは、子どもの名前、住所、連絡先や、保護者の名前、電話番号などを書いたカードのことです。家族の写真を入れておくこともあります。
子どもが迷子になったとき、周囲の人に助けを求め、適切に情報を伝えられるとは限りません。とくに災害時はパニックになりやすく、住所や保護者の名前がうまく言えなくなることもあるため、用意しておくとよいでしょう。
カードホルダーに入れて首から下げておくことや、リュックに付けておくと紛失の心配が減ります。
ホイッスル
親とはぐれた際に吹いて知らせるほか、防犯のためにもたせることも多いです。
防犯がメインの目的であれば、別で防犯ベルをもたせるのもよいです。ホイッスルと異なり、咄嗟であっても手元の操作だけで素早く助けが呼ぶことができます。
ネックライト
首から下げる小型のライトです。周囲を照らすことを目的とするよりは、夜暗くなっても子どもがどこにいるのかを瞬時に把握する目的として使用します。
ヘルメット
子どもは大人よりも転倒しやすく、頭の怪我は危険なため用意しておくとよいでしょう。
スペースを取るものの折り畳み式ヘルメットであれば比較的持ち運びやすいです。
ただ、ヘルメットは避難時にまず被るものでもあるため、自宅に備えておき、防災リュックには入れないのも選択肢のひとつです。
レインコート
雨に体温を奪われると血行が悪くなり、免疫力が低下し、病気を招きやすくなります。そのため、体が濡れないように雨具も用意しておきましょう。
両手がふさがらないレインコートであれば災害時でも避難しやすく、雨を防ぐことができます。
簡易トイレ
大人と異なり、子どもはトイレの我慢も難しいため、簡易トイレも入れておくと安心です。
ただ、子ども一人で簡易トイレが使えないのであれば、大人の防災リュックのみに入れておくのもよいでしょう。
着替え
体が濡れてしまったときや、気温の変化など、状況に応じて着替えるためにも入れておきましょう。
季節に合ったものが望ましいため、衣替えのタイミングで防災リュックもチェックし、中身を入れ替えるようにしましょう。
マスク
災害時には建物が倒壊し、粉塵が飛んでいることがあり、衛生面からもマスクで防ぐことは重要です。
ただし、マスクは顔にフィットしないと隙間から入り込んでしまうため、子ども用を必ず用意するようにしましょう。
軍手
子どもは視野が狭く、小学生となるとまだまだ注意力も散漫になりがちです。とくに、ガラス片や、尖ったものをつい触ってしまったり、不意に転んだりして、手を怪我することもあります。子どもの手を守るためにも軍手を用意しましょう。
歯磨きシート
子どもは虫歯になりやすく、歯磨きを怠ると、虫歯や口内炎が発生し、食べ物を食べたくなくなる、夜に眠れなくなるといったことも起こりえます。
歯ブラシをもっていくこともできますが、災害時には水は貴重なため、水を使用しない歯磨きシートがおすすめです。
おもちゃなど遊べるもの
小学校高学年になるほど、おもちゃから徐々に遠ざかる時期ですが、気を紛らわせるもの、退屈をしのげるもの、好きなものなど、遊べるものを一つでももっておくと、災害時のストレスや不安を軽減できます。
大人から子どもまで一緒に楽しめる防災アクティビティ
ここからは、企業や自治体で実施でき、子どもと一緒に楽しめる防災アクティビティを紹介します。
実際に防災リュックを作ろうとしても、子供がなかなか興味をもってくれないということもあるでしょう。
そのような場合は、まずは子どもと一緒に楽しめる防災アクティビティに参加するのも一つの方法です。
これから紹介する「おすすめの防災アクティビティ」は、楽しめるだけでなく、いずれも災害における「自助」、「共助」を学ぶことができ、以下のように災害のフェーズに応じた知識を身につけることができます。
- 事前準備:災害が発生する前
- 災害発生:災害発生直後から24時間
- 発災直後:災害発生後24時間から72時間
- 避難生活:災害発生後72時間から3ヵ月
- 生活再建:災害発生から3ヵ月以上
防災ヒーロー入団試験
防災ヒーロー入団試験とは、子どもが積極的に参加できる体験型の防災アクティビティです。
入団試験の名の通り、用意された種目をこなしていくことで「防災メダル」を集め、最後には「防災ヒーロー入団証」と交換し、防災ヒーローを目指します。
親子で参加し、防災の「もしも」を一緒に考え、家族の防災への興味・意識を高めることができます。
入団試験の種目は楽しさにフォーカスされており、ゲーム要素も盛り込まれているため、防災に興味がない子どもでも前向きに取り組めるでしょう。また、防災を通じて家族のコミュニケーションの機会にもなります。
具体的な種目の例は以下となり、いずれも所要時間は15分程度になります。
- 防災リュック間違い探し
机の上に並べられた防災グッズから、必要なものを選んで防災リュックに入れていきます。親子で相談しながら進めていき、最後に答え合わせをおこないます。防災リュック作りの練習にも最適な種目です。
- 防災スリッパ作り
災害時には足元にがれきが落ちていて危険なことも多いです。そのような状況を想定して新聞紙で防災スリッパ作りに挑戦します。この防災スリッパは熊本地震の現場で実際に使われたものになります。完成したらイボイボの上を歩けるか実際に試していきます。
- 水消火器射的
水が出る訓練用の消火器を使って射的をおこないながら、消火器の使い方を学ぶことができます。
- スモーキー迷路
煙が立ち込める巨大迷路から脱出します。火事を想定した種目で、煙を吸わないように姿勢を低くし、口元をおさえて脱出を目指します。
- おうち安全間違い探し
イラストに描かれた2つの家の様子を見比べて、防災における間違いを探し出します。
- 防災クイズラリー
「防災の日とはいつ?」「地震が起きた際に、エレベーターに乗っているときの最適な行動は?」など、防災にまつわる出題がされ、親子で一緒に答えていきます。
- 避難所ジェスチャーゲーム
災害時に人と助け合う「共助」にフォーカスした種目です。「避難所エリア」と「救援物資エリア」の2グループに分かれ、避難所エリアに不足している防災グッズを救援物資エリアの相手にジェスチャーで伝えます。身振り手振りを駆使し、相手の意図を汲み取る思いやりも育まれます。
防災運動会
防災運動会とは、防災知識を取り入れた新しい運動会で、老若男女問わず、体を動かして楽しめる防災アクティビティです。企業運動会やレクリエーションにおすすめで、家族での参加も可能です。
子どもにとっても馴染みのある運動会を通じて、防災の知識を身につけるだけでなく、人と協力することを学ぶことができます。ゲーム要素もあるため、飽きづらく、楽しみながら防災意識を高めることが期待できます。
所要時間は2~3時間程度になります。お昼休憩には非常食の体験会を実施することも可能です。
具体的な種目の例は以下となります。
- 災害脱出救済リレー
防災リュックをバトン代わりにし、防災に関するミッションを交代でクリアしていく障害物競走です。ミッションも「心肺停止した被災者の心肺蘇生を行う」、「毛布と棒で担架を作る」など、さまざまです。
- 防災借り物競走
災害時における怪我や、困っている人を助ける想定で、身の回りのものから解決できるものを探す種目です。怪我した人の止血や、体が冷え切った人を暖めるものを身の回りもので代用できないかを考えるため、発想力や臨機応変に行動する力が問われます。
- 瓦礫運び
瓦礫を模した大きい玉をチームの力を合わせて転がして、目的地まで運んでいきます。シンプルでありながら子どもに人気の種目です。
防災謎解き
防災謎解きとは、防災にまつわるテーマをもとに、災害に関連したストーリーを進め、謎を解いていく脱出ゲームです。災害を舞台に実体験に近い内容を学びながら、緊迫感のある謎解きを味わえます。
また、ただ謎を解くだけではなく、親子で一緒に防災を学び、力を合わせて問題に取り組む体験ができます。
防災謎解きの大まかな流れは、用意されたストーリーをもとに謎を解くと、新たな謎が出現します。さらに謎を解いていくと脱出へのヒントが集まり、無事にすべての謎を解くことで脱出成功となります。
「謎解き」と聞くと、難しそうに感じるかもしれませんが、イベントのプロによるサポートも完備されているため、初めてでも安心して謎解きを楽しむことができます。
プランの例として、以下のものが用意されています。
災害都市からの大脱出
「災害をみんなで乗り越えよう!親子で考える防災アドベンチャー!」をテーマにしており、プランのなかでもファミリー向けの内容です。周遊型の防災謎解きのため、自治体や商業施設での実施におすすめです。所要時間も30分から1時間程度となり、コンパクトに楽しむことができます。
揺れる会議室からの脱出
散りばめられた謎を解きながら基本的な防災知識を身につけられる室内型の防災謎解きです。小さなスペースがあれば実施できるため、他のイベントとの併用も可能です。所要時間は1時間から2時間程度となり、より集中して取り組みたい場合におすすめです。
まとめ
ここまで小学生の子どもの防災リュックに入れたいものを紹介してきました。
大事な子どものためと思って、あれこれと入れてしまいがちですが、先にも述べたように「軽さ」も重要なポイントです。子どもが背負っていて苦にならないようにしてあげることにも注意しましょう。
また、ただ避難できればよいわけではなく、子どもは感受性が豊かで災害時には大きなショックを受けてしまい、自分ではコントロールすることが難しいものです。好きなおやつ、おもちゃなどの遊べるものも用意して、メンタルのケアも意識し、身心の健康を保てるようしましょう。
子どもと防災について話すことで親子の一体感が増し、なによりも一緒に防災グッズを選んでいくのは楽しいものです。
ぜひ、この記事を参考に、楽しく子どもと防災リュックを作りましょう。
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